第61話 特技

 ―――歓迎会が終わって教室に戻ると、何人かの女子が俺の周りに集まってきた……勘弁してくれ。


「正吾君ってギター弾けたんだ? 葉倉さんの前でも弾いてんの?」


「―――まあ……な」


「軽音部っていつ入ったの?」


「あ―――、部の紹介で話したとおりだよ。偶々たまたまその部の人から『自分らが創部したこの部を存続させて欲しい』ってお願いされてな」


「なるほどね。自分が作った部とかって、やっぱ残したいよね」


「ところで軽音部の部員、今、五人いるって言ってたけど……あとの三人って……だれ?」


「一人は丹菜な」


「え? 楽器弾けんの?」


「名前だけだ」


「なーんだ。御前君結構弾いてたから、結構まともに活動してるかと思った」


「そう思ってくれたなら、ギター弾いたのは正解だったな。そう思わせることが目的だったからな」


「他の二人は誰?」


「陽葵と大地……陽葵の彼氏な」


「陽葵って希乃さん? 希乃と彼氏さんは楽器出来るの?」


「陽葵も丹菜と一緒で名前だけの部員だよ。大地と部長の空は一応、楽器できるぞ」


「マジ? 何弾けるの?」


「大地がドラムで空がベースな」


「へー、一応、軽音部になってんじゃん。ボーカル誰か兼任すればバンドとして機能するんだね」


「ただ、紹介でも言ったが、バンドの活動は出来て無いんだよ。だから、ちゃんと活動できる奴らこの部を引き継ぎたいんだ。条件に合った奴が入部してくれたら、俺達は全員退部する」


「三人の実力って……どうなの?」


「―――上手いんじゃないか?」


「あー……うん、わかった……はは」


 最初は「バンドやっている事は内緒」を通すつもりでいたが、ある程度真実を混ぜて隠そうとと言う事になった。そうすると嘘に真実味が出てくるからだ。そこで「男子は楽器が出来る。バンドも組んで」と言う事にした。




 軽音部の継承だが……結局夏休みまで誰も扉をノックすらしてくれなかった……去年の文化祭で結構バンド出てたから期待したんだけどな。

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