幼馴染みで美人な双子姉妹の片方と付き合ったら、修羅場を通り越してドロドロな三角関係になりました

岡田リメイ

二人と一人

第1話 幼馴染みの双子姉妹


 いつの記憶だろうか。

 微かに頭をよぎるのは少女達と過ごした遠い日の思い出。


「私の事、好き?」


 それは確か、近所の公園だった。

 家から徒歩数分で行けるようなそんな距離の場所。

 決して大きくはない普通の公園だが、幼い子供からすれば、心踊らせる大冒険の舞台であった。

 そう、幼い子供なら好奇心に任せて、毎日でも公園に通ってしまう。

 例に盛れず、俺もそんな子供だった。


「好き? う~ん。多分好きかな?」


「本当! じゃあ、大きくなったら結婚しようよ」


 俺の手を握り、天使のような笑顔で少女はそう言った。

 当時の俺はきっと『結婚』の意味なんて分からなくて、それよりも今日は何をして遊ぼうとか、どんな楽しいことがあるのかと別の事に思いを馳せていたはずだ。


「結婚? 良くわからない」


「う~ん」


 俺の返答に残念な表情を浮かべる少女。


「あっ! じゃあ......」


 少女は少し悩み、そして思い付いたように顔を輝かせる。


「大きくなってもさ、私とずっと一緒にいてよ」


 当時、幼かった俺もこの言葉だけは覚えていた。


「いいよ」


「本当!? 私を置いて行ったりしない?」


「うん」


「やった......!」


 覚えていたのは言葉だけで、誰とまでは覚えてない。


「──私、ずっと、ずっーと覚えてるからね」


 そう、の言葉だったのかまでは覚えていなかった。



 ****



 俺が玄関を出て、ちょうど家の鍵を閉めた時。


「はるくん~!」


 背中越しに聞こえてきたのは、明るい少女の聞きなれた言葉。

 まだ、暑さの残る九月の始め。

 やっと、見慣れ始めたセーラー服を身にまとい、こちらに手を振る少女に声をかける。


「おはよう、日向」


 彼女の名前は冬崎日向ふゆざき ひなた

 俺の幼馴染みである双子姉妹の姉だ。

 そのほっそりとした体躯に背中まで流れる艶やかな黒髪を一つに束ね、顔立ちは恐ろしく整っている。

 白い肌の彼女はまるで、作り物の様に綺麗だが、その人懐っこい笑顔には親しみやすさ覚える。

 そして、イメージ通り彼女は明るく話しやすい人物だった。


「はる、おはよ」


 その後ろで、控えめに手をあげた少女。


「葵もおはよう」


 冬崎葵ふゆざき あおい

 彼女が双子姉妹の妹だ。

 姉同様に綺麗な黒髪がなびく彼女だが、姉のポニーテールとは違い、その黒髪を背中にかけて下ろしている。

 顔立ちも日向同様に恐ろしく整っているが、日向よりもややキリッとした目尻がよりクールな印象を与える。

 そして、彼女もイメージ通り──よりは個人的に話しやすいと思う。


「お待たせ、行こうか」


 そして俺たちは歩き始めた。


 俺を挟む様に三人で並びながら、通学路を歩く。

 これは小学校の登下校から続いていたある種のルーティーンのようなものだ。

 と言うのも、冬崎姉妹とは同じ高校に通っているだけでなく、小・中学校も同じだったからだ。

 もっと言うと、俺達の関係は幼稚園まで遡る。

 家が近いこともあり、葵、日向とは毎日のように遊んだものだ。

 そして、現在もその関係を維持している俺達は紛れもない幼馴染みだった。


「昨日焼いたケーキがすっごく上手に出来たの、はるくんも写真見たでしょ?」


 日向が、俺の服の裾をちょんちょんと引っ張り話かけてくる。


 あれは確かに綺麗な焼き色のついたパウンドケーキだった。

 毎度の事だが、日向は上手く行った料理の写真などを俺に送ってきてくれる。

 それが本当に美味しそうで、お腹が空いてる時なんかは本当に飯テロなのだ。

 ただ、そんな俺を見越して日向は料理の差し入れを持ってきてくれる時がある。


 飯テロ写真からの現物支給。

 食欲旺盛な学生にとってそれは無類の破壊力を誇った。


「見たよ、お店レベルの出来だったじゃん」


「本当? 実は昨日作ったケーキ持ってきてて──」


「まじで!?」


「うん、お弁当の時間に皆で食べようね♪」


 手で口元を隠し、くすりと笑う日向。

 彼女の料理の腕はプロ顔負けで、勿論スイーツを作らせても完璧だった。

 昨日のアレが食べられると思ったら、自然と笑みが溢れてくる。

 新学期の憂鬱な朝だったが、一つ楽しみが出来た。

 きっと、今回のケーキも絶品なのだろう。


「はる、そういえば昨日の所クリア出来た?」


 そんな中、思い出したように葵が口を開く。


「あ~、全然ダメだった」


「後で装備見せてよ。攻略法考えるから」


 葵が話をしているのは俺がハマっているゲームの話だ。

 俺の方が早く始めたはずなのだが、気づいたら葵の方が先に進んでいた。

 これはこのゲームに限らず、今までプレイしてきたゲーム全般に言えることだった。

 どうやら葵は俺と比べ物にならない程高いプレイヤースキルを持っているようで、マルチプレイでも葵の神プレイには驚いたものだ。


「あ~助かる」


「任せて。今日中にクリアを目指そうね」


 葵の瞳には並々ならぬ自信を感じる。

 そして、その自信を俺は一片足りとも疑わなかった。

 昨日も葵とボイスチャットを繋いで遅くまでゲームを進めていたのだが、やっぱりその指示は的確でかなり進めることが出来た。

 今日もまたきっと......。


 そうこう話をしている内に学校に到着した。








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