伸びる人形

影神

物は大切に



各家庭の使わなくなった玩具を集め。


それらをまた新たな子供達に利用してもらおうという、


新しい取り組みが行われていた。


子供達は自由に自分達の欲しい物を一生懸命探して、


数ある内のひとつを無償で持って帰った。



誰が何を持って帰ったのか。


広げられた玩具は幾つ残っているのか。。


それらを数えるのをボランティアで行っていた。 



その殆どは、保育系の学校の単位としての、


補填授業みたいなものだった。



同じ物が欲しい子。玩具を投げてしまう子等もいた為。


そういった時の話し合いや、声掛け等がメインだった。



イベントが無事終わり。数を数え。写真と照合し、


元の箱へ戻す作業をしていた時。


ふと、ひとつの人形が落ちているのが目に入った。


「あれ、、?


忘れ物かな??」


人形は、某有名な人形だった。


「あの、、すいません。。」


上の人に落ちていた事を話すと、


電話で確認する様に言われた。



次回の参加や玩具の引き取り等に活用する為に、


参加者は皆。住所と電話番号を記載してあった。


今回来たのは20世帯ぐらいだったが。


その友達や親戚も参加者して良かった為。


それなりに人数が居た。



プルルルルルル、、


女性の声「はい?」


「玩具の再利用のボランティアの者なんですが、?


先程会場に、女の子の人形が落ちていたのですが。


心当たりはありませんでしょうか??」


女性の声「いいえ。」


「分かりました。何かありましたら、ご連絡下さい。


またのご参加を、お待ちしております。」


この様なやり取りを何回も繰り返した。


プルルルルルル、、



中には出ない方もいた。


確認が取れた世帯にマークをして。


次の電話をしようとした時。


折り返しの電話が掛かって来た。



「はい??」


電話の相手は女の子だった。


「もしもし??」


女の子「もしもし??」


「人形を忘れちゃった子かな??」


女の子「うん。。」


「お父さんかお母さん居るかな??」


女の子「いない。」


「住所とか分かる??住んでいる所とか。」


女の子「金物屋さん。」


範囲が広そうだが、手懸りは掴めた。



「そうなんだあ。


、、分かったよ。


人形さんは、後で届けるからね??」 


しかし。


女の子からの返答は意外なものだった。



「人形はね。要らないの。


"戻って来ちゃう"から、、



置いてきなさい!って。


言われたの、、」


一瞬の出来事だったが。。


女の子の声に、寒気がした。


「そうなんだ、、


一応引き取りとかもしているんだけども。それにはね、 


お母さんか、お父さんに一度。お話しなきゃいけないから。


また、お家の人が居る時に、掛けて貰えると良いんだけど、、


そう、言って貰えるかな??」


女の子「うん、、」



一度、寄附して。


「返してくれ。」


と、言うトラブルもある為。


引き取る際には幾つか書類を書いて貰う必要があるそうだ。



電話が終わると、おばあさんが話し掛けて来た。


「ごめんねぇ??


こんな事までやらせちゃって、、」


「いえいえ、、」


本心は違ったが、一応否定をしておいた。



おばあさんはお弁当と飲み物をくれた。


「お疲れ様でした。」


「ありがとうございます。



落とし物をした方は見付かったんですが、、


お子さんしか居なくて、、」


おばあさん「そうだったんだ。ありがとうね??


何か、言ってた??」



一瞬躊躇ったが、そのまま伝えた。


「はい。


人形が戻って来るって。。」


すると、おばあさんは溜め息をした。


「たまにあるんだよね、、そういうのが。。



だから、記入した世帯だけにした方が良いって。


言ったのに、、もう。」


チェックした紙を渡し、お弁当と飲み物を貰った。



人形は寂しそうに、テーブルの上に置いてあった。



お弁当を食べ終え、会場の掃除が終わると。


最後に主催者からの話があって。


皆。お土産を貰って帰った。



「ただいま。」


「お帰り。」


荷物を置きに部屋へと向かう。


「疲れたあ、、」


部屋に入ると、棚の中には見覚えのある人形が居た。


「あぁあ、、」


一瞬ビックリしたが。何だか可哀想にも思えた。



「お母さん??」


母親にそれを説明する。


「神社に持って行きなさい??」 


家事をしながら。少しきつく言われた。



「ついてないなぁ、、」


貰ったお土産を広げ、テレビを付けると。


某有名なお笑い芸人の人が出ていた。


番組はその芸人さんの私物紹介みたいな内容だった。


広げたお土産に当たる様にして、早々と口へと運んだ。



某有名なお笑い芸人「これは、ねぇ。


あのぅ~、、」


沢山の高そうな物があるなか。


ふと、古い人形のコーナーが映り。


「それはなに??」 


とスタジオの芸人さんが言うと、カメラマンがそこに寄った。


某有名なお笑い芸人「これはね。


マジで茶化さないで欲しいんだけど。。


あの、、。


怖がったりしないでね??



これねえ。。


動くんだよ。」


スタジオの芸人「どういう事??」


某有名なお笑い芸人「怖がらないでね??」


スタジオの芸人「うん。」


すると、お笑い芸人さんはクネクネと身体を揺らした。


そのお笑い芸人さんの動きを真似する様に。


人形は、ゆっくりとクネクネと動き。


首元からゆっくり、ゆっくりと伸びて行った。


人形の顔は今にもはち切れそうなくらいになり、


眼球を飛び出しそうになったが。


スタジオの芸人「なにやってるん??」


とツッコミがあり、爆笑がスタジオを包んだ。


某有名なお笑い芸人「え。。


見えなかった??」


カメラマンは、


「見えました、、」


と、引き気味になっていたが。


スタジオでは、


スタジオの芸人「見えへんよ!見えへん。


ただ、○○さんがクネクネしてただけやん。」


となったが、スタジオに居た観覧席の人から。


「見えました」


との声が上がった。


スタジオの芸人「え。。放送事故か??」


「こりゃあ、放送事故だなあ。」


仕事からいつの間にか帰ってきた父親。


「ねぇ、??」


思い出した様に、人形の件を話した。


父親「あれまあ。


きっと気に入られちゃったんだなあ??



お前が。」


母親「本当に伸びてたわね。」


父親「えぇ。??見えなかったよ。」


その日はなんだか人形と縁のある日なんだあ、と思った。



後日。


結局保護者が。


「家の物ではありません。」


と否定した為。


人形は、神社に行く事になった。



何でだか。


可哀想にも思えたが。


引き取る訳にもいかず。


人形は、沢山居る人形達と一緒になった。



「きっと。その方が幸せなんだ、、」

 

そう言い聞かせ。神社を後にした。。
















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伸びる人形 影神 @kagegami

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