第18話 再び山下

---ボンッ!!---



いつもの爆発音と白煙。そして20時ちょうどに現れるハゲ。


あれから毎晩ハゲがやって来るようになった。

ハゲは珍之助を連れてトレーニングに出かけ、きっちり2時間で帰って来る。

最初の2,3日はボロボロの体で帰って来た珍之助だったが、最近はもうすっかり慣れたのか、むしろ清々しい表情で『イイ汗かいて来ましたっ!』って感じで帰って来る。今日なんかハゲの方が疲れ切った様子でハァハァ言いながらフラフラしていた。


「り、凛子ちゅわん、ハァハァハァ・・・コイツよ、もうすげー強くなったから。俺よりも全然強くなったからよ、ハァハァハァ・・・今日で最後にするわ。これ以上やってると俺の方がもたねぇわ、ハァハァハァ・・・」


「え?そうなの?今日で最後なの?なーんだ、実はアタシ最近運動不足でさ、次からアタシも一緒に行って教えてもらおうかと思ってたのに」


珍之助が来てから食事の量が増えてしまい、ちょっとダイエットしなきゃと思っていた。

毎日珍之助がハゲと一緒にトレーニングしているのを見ていて、私も一緒にやればいい運動になるかな?と思っていたのだ。


「え?凛子ちゃんも?あー、そりゃ無理無理、ダメだって、教えられねぇよ」


「何でよ?ハゲのくせにケチだなあ」


「だってよ、俺達神様はよ、人間に触れねぇもん」


「は?何でよ?」


「凛子ちゃん、ちょっと俺と握手してみ」


ハゲに言われるままにハゲと握手しようと思い、ヤツが差し出した右手を掴もうとしたが、まるでホログラムのようにスッと私の手がすり抜けてしまった。


「ななな、何これ?キモッ!」


「な?わかっただろ?俺達神様は人間と物理的に接触出来ねえんだわ、人間に触ったり出来ねえんだよ。幽霊みてぇなモンだ」


「えええ~!何でっ?」


「知らん。とにかくこうなってるんだわ。神様って言うと何でも出来るって人間は思ってるみてぇだけどよ、違うんだな、これが。催眠術みてぇに人間の意識を操るとかさ、そんな事ももちろん出来ねぇしよ、人間に対して直接的に何かするって事が出来ねえのよ。出来る事って言えばよ、人間世界の未来を予知するとか、何かモノをちょびっと動かすとか、自分自身が瞬間移動するとかよ、それくらいだ」


「でもさ、前にアクティベーションってヤツやった時にメルティーと抱き合ったよ、あん時メルティーの身体、透けなかったよ」


「あー、アイツね、アイツは女神だから。俺とはちゃうから。女神っつーのはよ、人間と接触出来るのよ。人間との間で子供だって作れるぞ」


「そうなの!?メルティーって女神様だったの?」


「あ!ひょっとして女神って聞いてまた何か大げさなコト思ってるんちゃうん?女神ってそんなんじゃねえから。人間が思い浮かべる女神ってスゲー美化されちまってるけどよ、実際はそんなんじゃねえから。だってよ、メルティー見てりゃ分かるだろ?あいつまんまヤンキーじゃん、めっちゃガラ悪いじゃん、あんなんでも女神だから。まあ、おっぱいはでけぇけどな」


「そうなの!?何か思ってたのと違うなあ。でもさ、不老不死なんでしょ、神様って」


「はぁ?不老不死?ちゃうちゃう、俺らだって死ぬし。メッチャ死ぬし。全然死ぬ」


「えーっ!じゃあ神様じゃないじゃん!つーかアンタ本当に神様?いったいどこに住んでるのさ?」


「住んでる場所か?えーっとな、あー、えー、まぁ、その、上の方だ」


「上ってどこよ?」


「何つったらエエかなあ?あのよ、俺達神様が居る場所ってのはよ、凛子ちゃんたち人間が生きてるこの世界とは全然違う次元なんだわ。そんでよ、凛子ちゃんたちの世界みてぇなトコが他にもいっぱいあってよ、そこがヤベー事にならないように俺達神様が見張ってるんだわ。でもよ、さっきも言ったように俺達って人間を操ったりできねえじゃん、未来を見て何かヤベー事が起こるって分かってても人間に対して直接どうこう出来ねえじゃん。だからよ、凛子ちゃんのトコに彼氏製造キットを送ったんだわ、未来の救世主っつーのを凛子ちゃんに産んでもらうためによ」


「ふーん、何だか回りくどいやり方だねぇ」


「いや、俺もそう思ったんだけどよ、会議で決まったんだよ、会議で」


「会議ねぇ・・・」


「んじゃあよ、俺は帰るから。あー疲れた、じゃあな!バイバーイ!」


---ボンッ!!---


未来の救世主か・・・

ハゲの話が本当だとしたら、私がその救世主を生むんだよな?

で、その救世主のお父さんは珍之助ってことか・・・

は?

つーことは、私は珍之助と●●●するって事か!?

はあああ?

マジ?

コイツとHするの!?

うーん・・・


確かに珍之助はかなりイケメンに育ったし、最近は毎日トレーニングしているからか身体も引き締まって、喋らなかったらまるでモデルのような感じだ。

でもねぇ・・・コイツとそう言う事するって気になれないんだよなあ。

だって家族みたいな感じなんだもん。

もっと言えば”息子”みたいな・・・



ピコン!



スマホから通知音が鳴った。

誰だろう?・・・!!


あっ、ややや、山下新之助からだっ!

うひょ~!

どれどれ・・・何だろな~!



---shinnosuke

坂口さん、ご無沙汰してます

お元気ですか?and 珍之助クンも


---Rinko

山下さん、こちらこそご無沙汰です

私も珍之助も元気です


---shinnosuke

明後日の日曜日はお時間ありますか?


---Rinko

日曜日は特に予定はありません

一日中ヒマです(笑)


---shinnosuke

撮影が延期になってしまって休日になったので

もし宜しければ珍之助君と遊びに来ませんか?


---Rinko

いいんですか?

せっかくのお休みなのに


---shinnosuke

全然構いません

珍之助君と会ってみたいし、美咲も少し成長したので


---Rinko

それではお言葉に甘えちゃいます!

何時にお伺いすればよろしいですか?


---shinnosuke

僕が車で迎えに行きます

また四谷消防署の前で待ち合わせしましょう

時間は昼12時でどうですか?

みんなでお昼食べましょう


---Rinko

ありがとうございます!

四谷消防署の前で12時ですね

OKです!


---shinnosuke

楽しみにしています


---Rinko

私もです!



うわぁーーーー!やったー!

また山下新之助から誘われてしまった!

どうしようどうしよう、何着て行こう?


あ。


珍之助の服が無い・・・

さすがにTシャツにジャージってのはマズイよな。

明日は幸いにも土曜日で会社も休みだ。

よし、明日は珍之助に着せる服を買いに行くぞ!


でも何着せよう?

まあ、見た目だけは超カッコイイから何着せても似合うだろう。

ついでに自分の服も買っちゃうか!

わーい、久々にウキウキするなあ!

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