第3話 転生から五年
転生してから五年。俺は今年で五歳になる。
赤ん坊の頃からやっていた魔力トレーニングを今も毎日続けていて、どんどん魔力量が増えていっている。
そして…
「頑張れアルス!あと十周だ!いけるぞ!」
「ぐっ!はっ、はい!父上!」
体力作りも始めた。
まず最初に、屋敷の周りをランニング五十周する。かなりキツイ。
五歳がやるもんじゃないが、俺はこれのおかげ何とか食らいついている。
——足に魔力が集まる。
俺は地面を一気に蹴り、走る。
「そうだ!【身体強化】を使いながら走るんだ!魔力も体力も同時に増やすことができるぞ!」
【身体強化】の魔術だ。これは父上が最初に教えてくれた魔術で、身体能力の強化というシンプルなものだ。
これがかなり便利で、この世界の高名な武術家から魔術士までもがよく使うほどに基礎的で優れた魔術らしい。
父上は『身体強化』を完璧に使いこなしており、俺は父上の足元にも及ばない。
ドサッ、という音と共に俺は汗だくになって芝生の地面に倒れ込む。
「はーっ、はーっ、はーっ…」
「よく頑張ったアルス!さすが自慢の息子だ!」
「ありがとう……ございます…」
父上は俺を褒めてくれるが、疲れ果てて声があまり出ない。
というか、父上一緒に走ってたよね?なんでそんな平気そうなの?
そんなことを考えていると…
「おにいしゃまー!」
「アイ!」
トテテッ、と屋敷の玄関から走ってきたのは俺の妹のアイ。三歳だ。
アイは俺が二歳の時に生まれてからすくすくと成長し、今や俺たち家族や屋敷の者たちのアイドルになっている。
そんなアイがタオルを持って俺に駆け寄ってくる。
「おにいしゃま!だいじょうぶ?」
アイは俺にタオルを渡し、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「あはは、大丈夫だよ」
「つかれたらいってね!アイがだきしめてあげるから!」
「うん。わかった」
その満面の笑みはまるで天使のようだ。
タオルで汗を拭き、同じくアイが持ってきたコップ一杯の水を飲んでいると、
「よし!アルス、次は素振りだ!」
「わかりました!」
という訳で素振りをしていく。使うのは…
木斧だ!
「フッ!!」
ブンッという風を切る音を立て、素振りをしていく。
さいっこうだぜえええええ!!!斧きもちいいいいい!!!
何故斧があるかって?当たり前だ!俺いる所に斧は有り、この世の理だあああ!!
…本当のことを言うと、俺の父上はこのアスタニア王国で最強と言われる【
屋敷には父上が集めた様々な斧があり、これもその一つだ。
父上によると、キングトレントなる魔獣から取れた素材を木製の
この片手斧凄いんだよ!!鉄製の斧より軽いし、威力も全然違う!!強い!!
欲しすぎて父上に下さいって言ったら、
「ああ、良いぞ!使わないし、キングトレントならいつでも狩れるからな!」
…いつでも狩れる?
疑問に思ったので母上に聞いてみたら、
「母上、キングトレントってなんですか?」
「キングトレント?…ああ!あの
※キングトレントはこの世界でかなり危険と分類されるAランク魔獣です。
「あまり覚えてなかったわ。すぐ倒されてたもの」
※キングトレントはAランク魔獣です。
「でも、良かったわね!良いもの貰えて!」
※キングトレントは(以下略
……まあ、はい。
許しを得たのでこいつは俺の相棒になりました。
名前は…そうだな……黒いし、ダークアックスにしよう!
カッコいいよね?異論は認めないよ?
「よし…アルス!そろそろ終わりにしよう!昼食だ!」
「はい、父上」
ふ〜…、ダークアックスは至宝だな。一生大事にしよう。
そう思った俺は斧を置いて昼食を食べに行った。
◇
家族全員で昼食を食べ終わった後、紅茶とお菓子を楽しんでいた。
「ふー、食べた食べた」
「ふふふ。アルスちゃんったら食いしん坊なんだから」
「だって訓練疲れたんです」
「一生懸命頑張ってて偉いわアルスちゃん。この後はお勉強しましょうね」
「はい…」
勉強はもちろん礼儀作法だ。面倒臭いなあ。
そんなことを思っていると、お菓子を食べていた父上が俺に向かって話しかけてきた。
「そうだ、明日はアルスの『洗礼の儀』だぞ」
「あら、もうそんな時期なのね」
「『洗礼の儀』?」
疑問に思っている俺に父上はこう答えてくる。
「『洗礼の儀』というのはな、神様から祝福を受けてスキルを授かるんだ」
「スキル?」
え、何それカッコよ。ていうか、この世界って神様がいるの?
「まあ、あれだ!もっと強くなれるっていうことだ!」
「なるほど!」
うむ。分かりやすい。
「なんでアレで伝わってるのかしらね」
「ねー」
…後ろで母上とアイが何か言ってるけど無視だ無視。うんうん。
「ちなみに俺は【
…斧聖だって?まじか!?
「父上!【斧聖】とはどういうスキルなのですか!?」
知りたい。とにかく知りたい。
「【斧聖】とはな、斧の斬撃や衝撃、攻撃範囲にいたるすべての威力が跳ね上がり、どんな斧の使い方も分かるようになるんだ」
何それめっちゃ欲しい。
「アルスも良いスキルを授かれると良いな!」
「はいっ!」
スキルと言うものを聞いた俺は、さらに強くなりたいと願うのだった。
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