第28話 4人目の仲間(第一部 完)


今現在、お城には俺達以外いない。


城門を閉めて跳ね橋もあげたから暫くは誰も入って来ないだろう。


これからどうするか?


それより…


俺はマリンの死体を眺めている。


黒薔薇と黒牡丹の拷問で四肢が無い。


正確には腕は肘から先、足は膝から先が無い。


両方の乳房は斬り落とされている…


そして最後に首を俺が跳ねた。


マリンは、殺す直前に何故か…綺麗に一瞬変わった。


だが、その後に醜い姿に結局は戻ってしまった。


あの理由は、なんなのだろうか?


「どうかされましたか? 瞳様…その遺体に興味があるのですか?」


「どうかした…」


「なに? なにか悩み事かな?」


「いや…ちょっとな」


俺は、自分の経験した事をそのまま話した。


「そんな事がありましたの? 何となくですが…想像はつきますわ」


「…解らない」


「あはははっあたいは考えるのは苦手だからパス」



黒薔薇の言う事には…憎しみが増し俺に憎悪を向けた瞬間から俺の目が優しくなったそうだ。


そして…


『マリン…もしその殺意を捨てられるなら…助けてやるぞ』


俺がマリンに慈悲を与えてから急に元どおり醜くなった事から…『憎しみや憎悪』が恐らくは美しくなった原因なのでは…黒薔薇はそう考えたそうだ。


「確かに辻褄が合うな」


「そうですわね、もし気に入ったのなら、そこのゴミから何かお作りになれば良いと思いますわ」


「瞳様なら…作れる」


「そんな、事瞳は出来るんだ。凄いな」


「いや、そんな事俺には…」


「出来ますわ、従者の私だからこそですが、瞳様はもう神の世界に片足を突っ込んでいますわ…出来は兎も角、殆ど出来ない事はありませんわ」


「…瞳様に出来ないことは無い…」


「だが、一体どうすれば…」


「ただ、ご自分がしたいように…願えばそれで良いのですわ」


願う…


あの時の、マリンの姿は、どうだったか?


頭の中でイメージする。


よく考えたら、別に『あのイメージの必要は無い』


自分で好みの女性の女性をイメージする。


これが半神半人とはいえ『神』になるという事か…


この後、どうすれば良いのか頭に浮かんでくる。


『偽創造(クリエイト)』


それが頭に浮かび唱えた。


偽とつくのは無から自由自在に作り出すのではなく『ある物を自分の思うように変える』からみたいだ。


多分、上には本物の『創造』があるのかも知れないな。


憎しみの心を『俺たちから人間』へ変換。


これで、恐らく『人間を憎む』俺達側の存在になる。


こんな物でよいか?


そう思った途端に、マリンの死体が光り輝いた。


そして…完成した者は…


「なかなかエグイ者を作りましたわね…化け物ですわ」


「少し可哀そう…」


「これは…失敗なのかな? 酷いし大きさがあってない気がする…あはははどんまい…」


確かに思ったのとは違う。


俺から見たマリンの姿は


『残念系 グラビアアイドル』って感じだ。


秋葉原とかのグラビアイベントで可愛いのかどうか微妙だけど、一応は可愛いんだろうな…そんなグラビアアイドルみたいな容姿だ。


クラスで言うなら真ん中より少し上位。


有名な雑誌ではなく、小さな出版社が出している雑誌の表紙を飾っている感じ…そんなイメージだ。


髪は金髪だがどこかくすんでいてやや茶色、肌は軽く日焼けした部活系陸上女子みたいな感じ。


その癖、胸は大きく、お尻も大きい…お腹は出て無いが全体的に肉付きが良い。


『残念系 グラビアアイドル』


そこに尽きる。


顔は、まぁそこそこ可愛いが、この程度が…無難。


そんな感じだ。


黒薔薇や黒牡丹、京子は幻想的でこの世の者と思えない位の美女、美少女だが…俺が作ったマリンは…まぁ日常的な存在。


クラスに居たら、少し可愛い位の平凡な少女。


上手く言えないがそんな感じだ。


だが『他の人間』と違って…普通に少女だ。


ただ、残念な事に、手足が無かった分、小さく不自然。


簡単に言うなら170cmの八頭身美人をそのまま140cmにした感じに見えた。


まぁ…ギリギリ美少女には違いない。


今の仲間や邪神様達に会う前なら…きっと、俺は好きになったかも知れない。


「起きろ…マリン」


「う~ん…私は一体どうして…解りませんが『人が憎くて憎くて』仕方が無い…どうしたのでしょう…記憶がないわ」


「貴方は人間に家族や友人を殺されたのですから憎くて当たり前ですわ」


「そう…可哀そう」


「そうだな、あんな悲惨な目にあえばそうなるよ…」


「美少年に…禍々しい化け物が3人、私は魔族なのでしょうか?」


「何を言うんだ…3人とも綺麗じゃ無いか」


「私が可笑しいのですか?」


「鏡を見てみなさい…貴方の方が数倍醜いですわ」


「貴方は…凄い化け物…」


「お前も大概だよ…見れば解かるよ…あははははっ、凄いよ」


「私が? 私は美しいと言われた…嘘記憶が無い…それに…嫌ぁぁぁぁーーこれが…ハァハァ、私の姿…悍ましいこの姿が…あぁぁぁぁぁーーっ。そんな私は化け物―――っ」


しかし、俺の目の見え方がまた解らなくなった。


マリンが言う通りに普通の者から見て、黒薔薇や黒牡丹、京子より醜い姿なら…三人より美しく見えても可笑しくないのに、三人には全然届いて無い。


まぁ良いや。


今は、より俺にとって『仲間に見える存在』が1人増えたのだから、それで良しとしよう。


「マリン、悲観する程醜く無いよ? かなり小柄だけど、充分可愛いし綺麗だから気にしなくて良いんじゃないか?」


「嘘です…私は、私は醜い化け物です」


「その通り醜い化け物ですわ」


「否定しない…」


「あはははっ、確かにその通り。だけどあたいを含んで、此処には人間は居ないから、みんな化け物だよ! たしかにアンタは群を抜いて醜いけど…皆が化け物なんだから気にしたら負けだよ」


「…私は醜い…」


「いや、そんな事ないよ。三人には及ばないけどマリンも充分可愛いから、気にしないで良いよ」


「本当ですか?」


「本当だよ」


「そう…嬉しい」


「これも綺麗に見えるなんて、本当に凄い目ですわ」


「ありえない…」


「まぁ瞳らしいといえば瞳らしい、ブス専とも違うし…本当に変わっているよね」


「まぁね…それじゃ、欲しい物はアイテム収納に全部入れたし、やる事ももう無いし、行こうか?」


「「「「はい(ですわ)」」」」


お金も使いきれない程あるし、生活には困らない。


これから、ゆっくりと魔物や魔族と出会いながら魔王城を目指しますか。


(第一部 完)


※1~2日休んで 第二部がスタートします。



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