第26話 戦いの終わり


出会った瞬間にメイドだろうが、子供だろうが殺していく。


俺の目にはすべてが化け物にしか見えないから躊躇なく出来た。


「た、助けて下さい…」


「この子だけは助けて下さい…私はどうなっても構いません」


「貴様、それでも人間か…慈悲が無いのか!」


確かに酷い言われようだ。


人間が魔物や魔族を殺し、その素材を手に入れて生活している。


毛皮や革の鎧を着ている時点で駄目だろう。


これを魔物側から見れば『殺して皮を剥いで着ている』どう見ても悪魔の所業にしか思えない。


だが、あえて俺は聞くことにした。


「そこの兵士…お前は子連れのゴブリンが居たらどうする? 親だけを殺して子供は助けるのか?」


「そんな魔物、助けるわけないだろうが!」


聞くに堪えないな。


だが、子供を抱えた母親らしき人物は何か考えていたようだ。


「私は、魔物だって子供はきっと殺さない…」


馬鹿な女…それは正解じゃない。


「そうか…なら…」


「なにを…」


俺は母親らしき化け物に近づき子供を取り上げた。


「な、な、ななにをするんですか? 返して、私の子供を返してーーーっ!」


俺はそれを無視して、子供を床に叩きつけ…


「うえぇぇぇぇーーん」


グシャッ。


そのまま、頭を踏み潰した。


「貴様ぁぁぁぁーーーんて事を…」


「息子を、息子を返してーーーっ」


「う~ん、子供の血はなかなかですわ」


「うん…子供のお肉美味い…」


「折角の脳味噌が…じゅるっうん…美味い」


「嫌ぁぁぁぁぁぁーーーっ返して、返してよーーーっ」


「可哀そうだから食いかけで良かったら返してやれば…この偽善者に」


「うっひぐっ…偽善者?…なんで、私は私は…」


「馬鹿だな…母親が居なくなったゴブリンは自然では生きていけないから、恐らく死んでしまうよ。動物と同じだよ、野生動物が親を失ったら…他の動物の餌食になって死んでしまう…正解は『親子を助ける』だ。そうしないと結局は死ぬからな…と言う訳で不正解…死ね」


俺は剣を振り上げ…母親の首を跳ねた。


「お前等は人間じゃない…こんな事、こんな事…」


体は人間だが…もう心は人間じゃない。


「そんな事、今解ったのか?」


俺は、その場に居る人間を全員捻る様に皆殺しにした。


◆◆◆


「貴様ぁぁぁーーよくもやってくれたな。悪いことは言わない投降しろ」


「ちゃんと法の下、今なら裁いて貰える…だが逆らうなら、このまま殺す」


「我らはエルドラン王国騎士団…いかにお前が異世界人でもまだ勝てぬ」


アホがまた来た。


お前達が勝てないから『異世界人』を呼ぶんだろうが…


そんなお前らが俺に勝てる訳無いだろう…


「少しは一般兵士よりは強いのか? まぁ良いやアイスニードルサウザンド…」


1000を超える氷の針を魔法で作った。


「なんだあれは…幾ら異世界人でも…そんな…」


「横の魔族の影響か…」


「大丈夫だ、幾ら数が多くても、召喚されたばかりで威力など無い。盾を構え頭部を守れ。そうすれば…この強靭な鎧と盾が俺達を守ってくれる」


「「「「「ハッ」」」」」


「そうか…なら受けて見るんだな…」


千を超える氷の針が騎士たちへ襲い掛かる。


普通に考えたら、氷の針が金属の鎧を貫通するなんて考えられない。


だが、氷の針は簡単に盾や鎧を貫通してそのまま地面に刺さった。


ドガドガドガッ…ボコボコッ


「うがごぶぶえぇぇぇぇーー」


「うがぁぁぁーーっ」


「あああぁぁぁぁぁーー」


鎧ごと貫通された騎士たちはうめき声だけで話す事も出来ずに死体になっていった。


それをまるで農作物でも収穫するように異空間に三人が放り込んでいく。


戦うというよりまるで『狩り』をしている感じだ。


俺が猟師で、仲間が俺が狩った獲物を収納していく。


もう、戦っている感覚は無い。


『相手が弱すぎる』


ただ…数が多いのが面倒くさいだけだ。


「少しは手伝ってくれると嬉しいんだけど…」


「瞳様、もしかして飽きてしまいましたか? ならば此処からは私たちが狩らせて頂きますわ」


「瞳は少し休んでいて…」


「それじゃ、此処からはあたいらが頑張るから休んでいて」


「それじゃ少し休ませて貰うよ…」


レベルが上がっていくからか、体が熱い。


そのまま、柱にもたれかかり…うとうとしてしまった。


◆◆◆


「瞳様」


う~ん。


「瞳様…もう終わりましたわ」


う~ん…えっ?


「終わった?」


確かに王城はまるで廃墟の様に静まりかえっている。


「俺と同じ異世界人は?」


「此処に居ますわ…」


「此処に居る…」


「もう喋れないけど...ね」


「こんな感じですわ…」


そう言うと黒薔薇は俺のアイテム収納に手を突っ込むと、同級生の三上という少女の首が見えた。


「全員殺したのか?」


「はい、担任の橋本以外は全員殺しましたわ。不味かったのですか?」


「駄目だった?」


「ごめん、殺しちゃったよ」


「別に構わないけど…それで橋本以外の人は?」


「王族以外は、橋本を除き全員殺しちゃいましたわ…あと宝物庫の宝や貴重なアイテムも全部、アイテム収納の中に入れてありますわ…食料になった人達は時間が止まっている部分に入れておきましたから、当分食料には困りませんわ」


「それで王族は?」


「こちらに…」


三人に付いていくと…そこには無残な姿の国王エルド12世と王女マリン、橋本が居た。


3人とも裸の状態で揃って四肢が無い。


マリン王女に至ってはその状態で乳房が斬り落とされ床に落ちていた。


逆にエルド12世は両目がえぐり取られていた。


橋本は四肢は無かったが他は案外元気そうだった。


「凄いな…」


「「拷問人形です(わ)…から」」


確かにそういう種類の人形だったな。


名前からして『拷問』が得意なのだろう。


「それでどうするんだ?」



「ハァハァ、何故だ…何故儂がこんな目にあわないといけぬのだ…」


「私達がハァハァ一体何をしたというのですか? こんな、こんな酷すぎます…」


「黒木、お前はなんでこんな事をハァハァしたんだ…仲間を全員殺して…お前は何を考えているんだよ」


「何をしたかって? まず王と王女は誘拐をしただろう?」


「この世界を救う為にはぁはぁ…召喚しただけだ」


「そうよ、召喚魔法を使ったら貴方達がハァハァ来ただけだわ…狙ったわけじゃ無い」


「そうか…それは悪気が無かったとしよう…だが、お前達は俺を追い出しただろう?」


「それがどうした…ハァハァ」


「私はお金を渡そうと…」


馬鹿か。


「お前達は馬鹿なのか? 全く知らない土地に連れ去られて…そのまま放り出されたら死ぬしかないだろう? つまり俺を殺そうとしたんだよ!だから、俺はお前達に『敵になる』そう宣言したはずだ…だから殺しに来た…それだけだ」


「此奴らについては解ったが、俺は…そして同級生は何故だ」


「俺を見捨てたからだ…当たり前だろう? 先生も同級生もあのまま追い出されたら死ぬかも知れない…解らない訳無いよな?なのに追い出した。その時に俺は『全員敵だ』そう宣言したよな? ちゃんと『魔族に寝返る』そう言ったじゃないか? 残念ながら、これは戦争! 戦争しているんだから敵国の人間を殺すのは当たり前だよな」


「「…」」


「それなら…俺は…ハァハァ間違っていたのか?」


「これは小説でもゲームでも無い…生き死にを決める戦争…それに負けただけだ…王族二人違うか? 魔族や魔物は牢屋に居なかった。恐らくは問答無用で殺していたんだろう?」


「そうじゃな…だがお前は人間…何故魔族の味方を…」


「俺は普通の神より…邪神の方が好きだからだ! 人間より魔物が好きなだけだ…」


「そうか…まぁ良い…負けた…じゃぁ…うんぐっ」


そう言うとエルド12世は舌を噛み死んだ。


後は…


見るともう橋本の首は黒牡丹に千切られていた。


「…もう必要ないよね」


「そうだな」


「殺してやるーーっ! 殺されても、殺されても…何度も蘇って、お前だけ、お前だけは殺してやるわ! お父様を城の皆を殺したお前だけは許さない…必ず」


可笑しいな…


あれ程醜かったマリン王女の姿形が変わり始めた。


醜い姿から…般若の様な姿に変わり…金髪の美人に見える様に変わっていった。


何が原因か解らないが、今のマリンは凄い美人だ。


手足が無く、裸の方乳の無い美女が…目の前に居る。


まぁ黒薔薇や黒牡丹、京子には及ばないが…この目になる前のクラスで1番可愛い子より綺麗だ。


殺すには少し惜しい。


「マリン…もしその殺意を捨てられるなら…助けてやるぞ」


「私は…私は…ううっううっ」


なんだ…折角、美人になったのに…また元の姿に戻っていく。


「私は…」


もう要らないな。


「時間切れだ…」


「私は…少し時間を下さい…」


「もう駄目だ…時間切れだ、死ね」


俺は剣を振るいマリンの首を跳ねた。


マリンの死体の姿は元の姿のままだった。









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