第23話 勇者でもレベルが低ければ怖くない


「あれっ…黒木、何でお前が此処に居るんだよ?」


「よっ!」


黒金に白銀お前等こそ、なんで此処に居るんだよ…


黒薔薇と黒牡丹は収納に戻っているし、京子は今人間形態に戻っているから問題は無い。


「霧崎さんが冒険者だから、色々案内して貰っていたんだよ。この辺りにはお金になる薬草も生えているし、ゴブリンも出ると言うから、もし見られるなら遠巻きに見ようと思って…冒険者志望だから」


「そうか? 黒木は冒険者志望なんだ…所で浅羽は見なかったか? 近くの森で魔法を撃ちたいと言っていたからこの辺りにいる筈なんだが」


「あの馬鹿…宇佐川が攫われたか殺されたかも知れないのに勝手な事を、本当にムカつく…」


今、白銀は『宇佐川が攫われたか殺された』そう言わなかったか?


「宇佐川さんって逃げ出したんじゃないの?」


「黒木、あの宇佐川が1人で逃げると思うか? 前の世界なら兎も角、この世界じゃ頼る相手も居ない可笑しいだろう!」


「確かに…可笑しいよ…だけど怖くなったんじゃないのかな?」


「それは無いよな…なぁ黒金!」


「そうだな」


話を聞くと、宇佐川は黒金や白銀の幼馴染だそうだ。


だから、相談も無く居なくならない…そう言う事だ。


確かに、どう考えても辻褄が合わない。


どうした物かな…


俺が、そう考えていると…


「確かに、それは可笑しいね…神隠しかかも?」


「「神隠し?」」


京子はいきなりそんな事を言い出した。


「なにを驚いているのかな?沢山の神に出会ったよね? ほら前の世界のギリシャ神話なんかだと、ゼウスを始め結構女にだらしない神様って居たでしょう? この世界にだって勿論居るよ…召喚してすぐに消えるなんて…その可能性が高いかもね?」


「まさか、相手は神様だぞ」


「そんな事が…ある訳ないだろう…」


「そうかな? あたいは…疑わしいと思うよ? 幾ら魔族でも王城に押し入ってしかもピンポイントに聖女を狙えるかな?可笑しい」


「だが、この世界を救う為に呼んだのに…そんな事するのか?可笑しいだろう」


黒薔薇と黒牡丹が勝手に収納から飛び出して後ろに回わり、黒薔薇は伸ばした爪で一瞬で白銀の首を跳ねた。


「うぐっ…」


信じられない者を見た顔で黒金がこちらを見ている。


首が宙に舞っているんだ…当たり前だな。


「嘘だろう、白銀が一瞬で殺されるなんて、黒木、霧崎さん…にげ…ぎゃぁぁぁぁーーっ」


だが、こちらを見た瞬間に京子は舌を伸ばして黒金の目をほじくり出して食べていた。


「あはははっ、油断するからこうなるの…目美味しいよ!」


まるでキャンディを舐めている様に頬が膨らんでいる。


口の中にあるのが目玉でなければ、なかなか可愛いし、ちょっとエロい。


「よくも、白銀をぉぉぉぉーーっ、しかも俺の目玉までーーっ殺してやるーーっ もう逃げられない、仕方ない玉砕覚悟で戦うしかない、行くぞ黒木――っ」


馬鹿な奴…俺は敵だよ。


武器があれば、俺が殺しても良いのだが…武器が無い。


仕方なく俺は黒金の足を引っ掻けて転ばした。


「なにをしているんだ、黒木…」


「悪いな…此処にはお前の敵しか居ない」


「殺す? 出来ない事をいっても無駄ですわ…残酷に殺してあげますわ」


「肉…臭くて美味しい肉…」


「目の穴から脳味噌を吸うのも美味そうだ」


「やめろ…やめろ…やめてくれーーっ」


あっさりと黒金と白銀、勇者と剣聖は死んでしまった。


よく考えたら魔王ですら大怪我を負わせる程強い、黒薔薇と黒牡丹相手じゃ…レベルも真面に上がっていない奴なんてこんな物だな。


ゲームの世界ならスライム1匹倒して無いんじゃ勇者でも弱くて当たり前だ。


警戒する必要は無かったな。


「食べられるのか?」


さっき浅羽を食べて、冒険者3人も食べたんだから、普通ならお腹が一杯の筈だ。



「そうですわね…勇者と剣聖は別腹ですわ」


「臭い肉…は美味しいから別腹…」


「あはははっ二人が食べるなら、あたいも頑張って食べちゃおう」


しかし、この小柄な体に良く入るな…京子でも可笑しいのに…黒薔薇は兎も角、黒牡丹は肉、何十キロという単位だぞ。


間違い無く大食いチャンピオンになれるな。


「はい、人石ですわ」


黒薔薇が引き裂いた体から人石を2人から取りだし此方に持ってきた。


折角だから…


「あ~ん」


「瞳様?」


「折角だから黒薔薇に食べさせて貰おうと思って」


「そうですか? 宜しいですわよ…はいあ~ん」


「姉さま…ズルい」


「良いなぁ…それ、今度、それあたいにもやらして」


顔を赤くして石を飴玉みたいに俺の口に細い指で運ぶ黒薔薇が凄く可愛く思えた。


『鑑定』


黒木 瞳

LV 32

HP 1900  (+382000)

MP 3800 (+240842)

ジョブ:魔法騎士(魔界の大勇者)(魔界の聖人)(大魔道)(魔剣豪)(邪神の眷属)

スキル:翻訳(意思疎通を付与し、人族だけでなく魔族、魔物相手にも翻訳可能) アイテム収納(広さは小城レベル) 鑑定(極み) (隠ぺい(極)) (邪眼:覚醒) (闇魔法レベル32)火魔法レベル32 風魔法レベル32 水魔法レベル32 

(光魔法(回復限定)レベル26)(聖魔法レベル21)

(従者:黒薔薇 黒牡丹)

加護:(邪神エグゾーダス)(邪神コーネリア)

※( )の中が偽装される。


           ↓(偽装後)


黒木 瞳

LV 32

HP 1900

MP 3800 

ジョブ:魔法騎士

スキル:翻訳 アイテム収納 鑑定 火魔法レベル32 風魔法レベル32 水魔法レベル32

加護: ****** ******


かなり強くなった気がする。


それに四職全て倒したから、暫くはやる事もないだろうな。


問題は、この状況をどうするかだ…


つい勢いでやってしまったが…四職のうち三職が1日で消えた。


不味いな。


◆◆◆


さっきから京子が手紙を書いている。


「こんなもんか?」


「なにをしていますの?」


「こんな所で手紙…」


なんの手紙だろうか?


覗き込んで見ると、浅羽、黒金、白銀の連名の手紙だった。


あて先は担任の橋本宛だ。


「これで大丈夫! どうかな?」


手紙の内容は…簡単に言うと


『怖いから勇者パーティを辞める…他の国で冒険者として生きるから探さないで下さい』


そんな内容だった。


「それ、凄いな…まるで黒金達が書いたみたいだ」


「あはははっ、キマイラのせいか食べた人間の記憶が暫く、頭に浮かぶんだよね。だから、これは黒金達が書いたのと全く違わないよ…尤も大体数日で消えちゃうんだけどね」


当人が書いたのと同じ手紙。


これじゃバレようが無いな。


担任の橋本なら、三人の筆跡が解るから完璧だ。


「これで安心だな…帰ろうか?」


「そうだね」


こうしてあっさりと四職は簡単に狩り終わった。











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