第16話 謎の美女 霧崎京子② キメラ


「まず、簡単に説明すると『霧崎京子』まぁ、あたいだが、異世界からの転移者だったが、魔族との戦いで死んだんだ…」


死んだ?


死んだのなら何故此処に居るんだ…幽霊なのか?


「まさか、幽霊とかそういう話なのか?」


「近いけど違うな! あたいの場合は『キメラ』なんだよ…正確には複合製キメラの試作品…異世界人霧崎京子の死体をベースに色々な魔物を魔法や魔術を使い合成して対魔族、魔王ようの兵器として作られた…その失敗作があたいだ! あたいの体には沢山の魔物の遺伝子が組み込まれていて、その姿になりその力を使いこなす様に作られたんだけど…」


彼女は涙目になり言いにくそうにしていた。


今聞いただけでもかなり酷く感じるが、これ以上の何かがあるのだろう。


「…」


「笑える事に、変身したその姿は元の魔物を越える程醜く、そしてその、能力は本物に及ばない…そして何より…」


更に顔が歪み、辛そうに見えた。


だから、俺はただ黙って話を聞く事しか出来なかった。


「…」


「あたいは数日に一度『人間を食べない』と生きていけない、正確には脳みそや内臓が多分必要なんだ…と思う…だけど食べるだけなら、骨でも肉でもなんでも食べられる…わ。食べないと体に耐えきれない程の激痛が走り、バラバラにされるような痛みが走り…研究者の話では最後に死ぬらしいわ…あははははっ、わはははは、本当の化け物なのよ」


「霧崎さん。自分の事、化け物って呼んでいるけど、随分辛そうだな」


「そうだね…どうせ、こんな化け物を作るなら、心や記憶なんて全部無くせば良かったんだよ! でも、あたいは、あたいには霧崎京子の感情や記憶がそのままあるんだ! 外見は兎も角、あたいの中身は『ただの化け物』だ…流石に…あんたも引くだろう」


近くには『化け物の雌』に見える死体の頭部が転がっている。


この目になった時からきっと俺は壊れていたに違いない。


だって、俺にはそれが『動物の頭』にしか見えない。


しいて言うなら『寄食癖のある美女』にしか霧崎京子?が思えなかった。


俺は…『狂っている』そう認めるべきだな。


この目の影響で、人類はもう『魔物』や『家畜』となんら変わらない。


聖女であった宇佐川聖子は友達では無かったが同級生である以上、挨拶位はしていた。


それが殺されても、悲しく思えなかった。


この体が人であっても、もう俺は『人ではないのだろう』


「引かないな。俺の仲間が同級生を殺した…その話を聞いても、特に思う事は無かった。寧ろ俺の為にそれをしてくれたと聞いた時、嬉しく思えた程だ。今も目の前で、自分を化け物だという、凄い美人が人間を殺して食べているが…別に何とも思わない。美人が寄食をしていて…何て絵面だ…そう思ってしまっただけだ」


「そうなんだ? 寄食? どう言う事?」


綺麗な美女が『猿の脳味噌を食べている』『虫を食べている』そんな感じだな。


「霧崎さんでもあるんだよな…簡単に言うなら美女が『猿の脳味噌』や『豚の頭』を食べて居る感じだよ」


「それだけなの?」


「それだけだ。よく考えれば俺自身が『邪神側の人間』だから、人間なんてどうでも良い立場だし…何より霧崎さんは凄い美人だ。此処迄の美人には俺は4人しか会った事は無いから」


「そう? なら正直に言うよ!私は霧崎京子であって霧崎京子じゃ多分無い…見ての通り擬態している、何か別の生物だ。そして捕食対象は人間何だよ…そんなあたいを『美人』だ『綺麗だ』って可笑しいだろう…それに霧崎京子の姿は本来の姿じゃない…本物の私は…世にも悍しい化け物だ」


不思議だ…俺の目には『霧崎京子』の姿に擬態をしていても美人に見える。


黒目、黒髪のすらっとした大人びた美人だ。


見方によっては大人びた高校生に見えるが、良くブレて天使や綺麗なサキュバス風悪魔にも見える。


その一つの姿はさっきの天使の姿だ。


まぁ口の周りは血だらけだから、ちょっとしたホラークィーンだな。


兎も角重要なのは…バグなのか解らないが『どの姿も美人』に見える。


だから、仲間として絶対に欲しい。


「それでも良いから、俺の仲間になってくれない」


「え~と、あたいは化け物だよ?」


「それで良い」


「人間を食べるけど?」


「構わない」


「本当に聞くけど…あたいは美人なのか?」


「ああっ、凄い美人だ」


「これでも?」


そう言うと霧崎さんは姿を変えた。


「天使みたいだ」


「これなら…」


「サキュバス風、エロイお姉さん」


「これは?」


「未亡人風、大人の色気のある美女」


「これは?」


「ケモ耳獣人お姉さん」


「これは?」


「巨乳のグラマーなグラビアアイドル、もしくはAVギャル風セクシー美女」


「これは」


「美少女の魔女っ子が大人になった姿」


「これは?」


「変身するサイボーグ美少女の10年後かな」


凄いな、服は変わらないけど、コスプレじゃなくて中身が色々な美女に変わっていく。


どこからか『変わるわよ』という声が聞こえてきそうだ。


これは空耳だな。


「呆れたぞ…どの醜い姿も…全部美女なのか? 良いよ、これから先、あたいは生涯1人で過ごすと思っていた。だが霧崎京子の心がやたらと寂しがる。人を殺している癖に食べている癖に『寂しい』と涙が出る時がある…だから良いよ仲間になってあげるよ…こんな化け物で良いんだよな?」


「ああっ構わないさ」


「それじゃ宜しくな! それでなんて呼べば良いのかな?」


「瞳で構わない」


「女みたいな名前だな」


「良く言われる、それで俺はなんて呼べば良い?」


「そうだね、確か、死ぬ前は京子かお京が多かったから、京子かお京どちらでも良いよ」


「それじゃ、お京でこれで良いのか?」


「うんうん、構わないよ。瞳」


これでいつも傍に居て貰える3人目の仲間が出来た。


だが、これでまた一つ疑問が出てきた。




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