第15話 謎の美女 霧崎京子①


奴隷商の犯罪奴隷に牢屋…此処迄見て歩いても、俺の目に美しく見える存在は居ないのか…


牢屋で普通に見える2人は話を聞けば、何人もの人間を殺した人物で、死刑が確定しているようだ。


ただ、それでも『普通』。


この場合の普通は、『一応普通の人間』というレベルだ。


なんと言えば良いのかな?


『はげで豚の様にデブで凄く不潔で髪がフケだらけ』


その位酷い。


他の人間に見えるレベルは『人間だよな?』と言う感じで、更に酷く、人間と言う枠の中で一番醜いレベルをイメージしてくれ。


そう言うレベルだ。


これを喜んで良いのか、悪いのか解らない。


多分、黒薔薇や黒牡丹に邪神様達に会う前ならこれでも妥協したに違いない。


『それでも人間に見える』からだ。


最早、俺は詰んだ…のかも知れない。


◆◆◆


駄目だ…


時間があったから、他の奴隷商にも行ったが、同じだった。


結局、一番真面に見えたのは『死刑囚』だった。


そう考えたら、危ない存在程綺麗に見えるのかも知れない。


まだ、確定では無いが…


結局、俺は当てが無いから、ただ街をブラブラしている。


『この気持ち悪い世界でこれからも生きて行かないといけないのか』


ただ、前程の絶望ではない。


二人が居るからだ。


ただ、この世界ではどうしても人との関わり合いが必要になる。


一番手っ取り早い冒険者になるにもパーティは、表向き必要だ。


『どうしようか?』


そう考えていると、違和感のある『人間』が居た。


綺麗な日本人に見えるのだが…その綺麗さが解らない。


成人した美女に見えるのだが…可笑しい。


美女に見えるのも、可笑しいが、その存在がブレて見える。


何故だ…


セクシーな怪しげな美女。


天使の様な清楚な美女。


ビキニが似合いそうに見えれば、まるでSM嬢に見えたり、清楚なお嬢さんに見える…最早訳が解らない。


1人の人間がさっきから幾人もの容姿に違って見える…


よく見てみると、彼女は何かをを探し、何かを警戒しながら歩いている様に見えた。


『しかし綺麗だ』


黒薔薇や黒牡丹が年下に見えるのに対してコーネリア様の様な大人の女性だ。


出来たら仲間には無理でも、知り合い位にはなりたい。


そう思い、俺は彼女の後をつけた。


今迄の人生でナンパなんてした事が無い。


どう、声を掛けたら良いのだろうか?


そう思いながら、距離を取り後をつけていると、彼女が曲がった瞬間に悲鳴が聞こえてきた。


「きゃぁぁぁぁーーーー助けてーーっ」


「大丈夫ですかーーーっ!」


俺が曲がり見た光景は…


ピチャピチャピチャ…ガリガリ。


化け物を食べて血を浴びている。


彼女だった。



◆◆◆


「あんた…さっきから、あたいをつけまわしていましたね?なんのつもりなのかな?」


化け物の首が転がっている…俺にそう見えるだけで、これは人間の女の首だ。


「綺麗な女性が居たから、話がしたくて…」


「そうかい? あんたさぁ…この女の姿が好みなのかい? まぁ異世界人らしいからそうなのかもね? だが、残念だね…あたいは化け物…それも恐ろしい化け物なんだ…この姿は仮の姿…人を殺し食べる所を見たんだ…可哀そうだが死にな!」


そう言うと、彼女の姿が変わっていく。


金髪のセクシーな姿。


羽が生えていて、清楚な感じだが、体はボンキュッボン。


まるで昔の大人の美女に変身するアンドロイドか魔法少女みたいだ。


今の姿は…マジで天使。


しかも、全裸だから…目に困る。


俺は流石に直視できなくて目を逸らした。


「そんな…」


「うふふふっ、あははははっこの恐ろしい姿に臆しただろう?これがあたいの本当の姿だ! 世にも悍しい化け物…死ね…」


「瞳様、危ないですわ! 瞳様に手を出すなら…残酷に殺してやるーーーっ」


「死ね…」


そう言いながら二人は美女の手を掴んで、そのまま投げ飛ばした。


「ハァハァ、あんた、傀儡使いかい、あたいを殺すのかい?…まぁ良い、返り討ちにしてやる! その2体の化け物みたいな傀儡もろとも殺してやるーーーっ」


黒薔薇と黒牡丹の爪が異常な程長くなり、二人は走って行く。


「瞳様を殺そうとしましたわね!残酷に殺してやるーーーっ」


「…殺す…ミンチにして殺す…」


「あたいを殺すだと! 殺せる物なら殺してみな...」


目の前で美少女二人と美女が正に殺し合いを始めようとしている。


ヤバい。


「ちょっと待ってくれ! 黒薔薇、黒牡丹落ち着いてくれ…そこの貴方、え~と少し話がしたい。攻撃を少し、待ってくれないか?」


「はんっ!待てだと…何が話したいんだ? まぁ良い話位は聞いてやる…くだらない話だったら…只じゃ置かねーからな」


「ありがとう。黒薔薇、黒牡丹ここは引いてくれ! 美しい三人が殺しあう姿なんて見たくないからな」


「「瞳様…解りましたわ(解った)」」


「えっ、あんた、なに言っているんだ」


止められて良かった。



◆◆◆


「何だと! あたいが美女に見えるだと! 嘘つくなよ…」


「はい、今の姿はまるで天使にしか見えません…それですいません隠して下さい…刺激が強すぎます」


目の前に金髪のセクシーな天使みたいな女性が裸でいるんだ。


恥ずかしいのは仕方が無いだろう。


「瞳様は嘘をつきませんわ…邪神様達が美女に見える位なのですわ」


「瞳は嘘をつかない…私達も愛でてくれている」


「邪神が美女? お前達みたいな醜悪な人形が…」


「黒薔薇や黒牡丹は美少女だ。貶めないでくれ…」


「マジ…らしいな? この姿を見て顔を赤くしているんだから…信じるよ…ああっ、あたいも恥ずかしくなってきたから服を着るから待ってろ…これで良いか? それでなんの用なんだよ!」


「実は…」


俺は自分について話した。


目の事から転移者である事…そして守護神が邪神である事まで。


「成程ね…邪神が守護神なら、そう言う事もあるのかな?」


「それで、貴方は魔族ですの? それとも魔物? いずれにしても、邪神であるエグゾーダス様にコーネリア様の加護を持つ瞳様に襲い掛かるなんて可笑しいですわ」



「…魔界の勇者…何故、それが解らない…可笑しい」


「あたいは魔族でも魔物でもねーよ…まぁ良い、瞳、あんたの事情は解った…だが、あたいは恐らく、その二人より遥かに醜い存在だ…これから、あたいの姿でも悍しい姿を幾つか見せる…それからだ」


「解った」


そう言うと彼女は変身をし始めた。


天使から、サキュバスのセクシーな美女みたいな姿に変わった。


「なんて悍しい姿なの」


「…酷い」


え~と違うタイプの美女に変わっただけだよな?


そして、グラマーな女性に水着が似合うグラビアアイドル…幸薄そうな未亡人…何回も姿が変わった。


その度に、黒薔薇や黒牡丹は目を伏せた。


「なんで、そうなったの?」


「酷い…」


「それで、あんた…あたいはどう見えた? 幾ら邪神が守護神でも…此処迄の化け物…見たいとは思わないだろう?」


「沢山の美人に変身できるの…凄い変身能力だ」


「全部、あたいの本当の姿だぜ…なぬ?…美人? あたいが美人?」


「凄いですわね…あれすら美人」


「コーネリア様より…酷いのに…」


「嘘はやめろよ…な」


「もう大丈夫ですわね…瞳様は嘘は言わないのですわ…帰りますから良く話すと良いのですわ」


「…大丈夫…そう…帰るね」


そう言うと二人は帰っていった。


「嘘じゃないよ…それで、取り敢えず名前を教えてくれないかな」


「あたいは…取り敢えず、そうだな『霧崎京子』そう呼んでくれ」


「解った。それで魔族でも魔物でも無いなら、その霧崎さんは何者なんだ?」


「あたいは…」


今度は霧崎京子が自分について話はじめた。











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