第9話 貴方の人形だから


俺は勇者達が誰なのかを見ていた。


「それでは、神々に勇者、聖女、賢者、剣聖のジョブを与えて頂いた方はこちらにどうぞ」


マリン王女の方に行ったのは…


黒金大樹、宇佐川聖子、浅羽聖人、白銀大河の4人か?


同級生の中心人物と言えば、そうだが…


派手なだけで、そんなに凄い奴らには思えない。


特殊な能力を与えられたという事は、神から見たら何か魅力的な事があるのだろうか?


◆◆◆


夜の歓迎会まではまだ時間がある。


この世界に来たが…やはり駄目だ。


殆どの人間が悍しく醜く、まるで化け物の様に見える。


最近は『毎日の事で慣れた』が、今の様に見え始めた時は恐怖しか無かった。


今迄、普通に見えていた者が…全て化け物に見えるようになった。


全ての人間が…ホラー映画の化け物以上に恐ろしい存在に見える。


好きだった女の子は、最悪の化け物に見える位、悍しく恐怖の対象になった。


話掛けられるとそれだけで1日が幸せになる程の子が…見た瞬間にチビりそうな位の化け物に見えた。


何度、この目を潰そうと思ったか解らない。


だが、中学生になる頃には『慣れた』


慣れと言う物は凄い。


全てが悍しい存在に見えても、どうにかメンタルを維持できる。


とは言え『ちゃんとした存在に会いたい』


その願望は日に日に高まっていく。


俺が真面に見えた存在はテレビで見た『連続殺人犯の高校生』だった。


尤も、彼女は普通に見えるだけだった。


この目になってから綺麗に見えた存在は『トイレに入っていったおかっぱに赤いスカートの少女』『田舎で会った身長が2メートルを超える女』『私綺麗?そう聞いてきたマスクの女性』の3人。


そうこの目になってから美女、美少女に見えたのはたった3人だけだ。


それも会っただけで、その時だけで2度と会えなかった。


そんな俺が、美女と美少女…4人と出会えたんだから、それがどれ程、嬉しかったか…解るだろう。


そして、その幸せの半分は、これからも続いていく。


「黒薔薇に黒牡丹、出て来て欲しい」


俺がそう言うと、目の前に二人が現れた。



「え~と…ご主人様? 瞳様?どう呼べば宜しいのでしょうか?」


「どう呼べば…良い」


やはり、この二人は凄く可愛くて綺麗だ。


人形だと言うけど、美少女にしか見えないから二体じゃ無くて二人で良いだろう。


「そうだな、任せるよ…それで俺は二人を何て呼べば良いかな?」


「私は好きな様に呼んで貰って良いのですわ…その瞳様の人形ですから…」


「私も良い…瞳様の人形だから…」


「それなら黒薔薇と黒牡丹、親しみを込めてそう呼ばして貰って良いかな?」


「ええっ、それで良いですわ。私は、瞳様の…人形ですから」


「私もそうだよ…それで良い」


「そう? それなら黒薔薇、黒牡丹、これから宜しくね」


「こちらこそ宜しくですわ…それでなんで私達を呼んだのですの?」


「…なにか困った?」


別に用事があったわけじゃ無い。


しいて言えば、化け物たちに囲まれての生活に慣れてはきたが…傍に美少女が居るから『癒し』が欲しくて呼んだだけだ。


「いや、生活に疲れていてね…君たちを呼んで癒されようと思って呼んだんだ」


「私に癒して欲しいのですか?一体私は何をすれば宜しいの? 何でもして差し上げますわ」


「うん…何でもする…」


いや、只こうして話をしてくれるだけで嬉しい。


傍にいるだけで心が癒される。


「別に何かしてくれなくても良いよ。ただ傍に居てくれて話をして貰えるだけで、癒されるし嬉しいから」


「そんな事で宜しいのですか? それなら幾らでも一緒に居て差し上げますわ」


「…一緒にいる」


悍しい化け物と暮らす毎日。


そんな中で唯一人として見られる存在。


しかも、それが美少女で傍に居てくれるのだから嬉しいのは当たり前だ。


「二人とも、傍で見ると…本当に凄いな…凄く綺麗だ」


「「…!?」」


なんで驚くのかな?


「どうかしたの?」


「いえ、何でもありませんわ。そのありがとうですわ」


「嬉しい…」


そう言うと二人は俺の横に座りもたれかかって来た。


二人の感触が両方から伝わってきたせいか、顔が赤くなり、俺はただ見つめる事しか出来なくなった。











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