第51話 私の仲間が死んだ理由

6人の仇の1人、土のスターシャが現れた。


ほっそり系統の162センチ。だけどお尻ムッチリな感じ。頬骨が出ていて、いつも神経質そうな顔をして、たまに薄ら笑いを浮かべていた。


今もそうだ。


「スターシャ、なぜここに?」

「それはこっちのセリフよシクル。男爵家に押し入って当主殺しなんて。無茶するわね」


シクルは話ながらポーションを飲んでいる。だが、千切れかけた左腕の表面に薄膜が張って血が止まっただけだ。もちろん左腕は動かない。




「・・貴様」


「ん?ユリナよね。あなたまでここに来てるなんてラッキーだわ」


「どういうこと?」


「私もシクルも同じノルド子爵家の分家出身。ま、分家といっても汚れ仕事を担当することが多いのよ」


「あんたになんか捕まらない」

「ふふっ、捕まえるわよ。ジュリアの先を越せたようね」



ノルド子爵家。今後の要警戒ワードだ。


「ジュリアとのしあがる計画も頓挫しかけてるし、次の手を考えたわけよ。あなたを捕まえて、シクルと一緒に子爵家の中で立場を上げるか、子爵家を乗っ取る。それが面白ろそうかなって。ねえシクル」


「スターシャ。私はあなたの計画に賛同なんかしてない」



「馬鹿ね。あなた、女しか愛せない上に悪事にも手を染めてきた人殺しよ。貴族社会で利用されるか、のしあがって利用する立場になる。その2択しかないのよ。今さら何を言ってるの?」


「ターニャの前でやめて!」


「そう、その子。あなたに幻想を抱かせたナリスにそっくりなんだもの。シクル、また私を捨てて、質素でも明るい世界で生きたいとか言い出すのね」


「違う。ターニャは守りたいだけ。ナリスの妹なのよ」


「ナリスにその気はないのに、ナリスと過ごして真実の愛を見つけたとか言い出すし・・。変態のくせに、何を言ってるんだか」


「やめて!」


「ターニャちゃんだっけ。このシルクさ、私がどんな攻めかたをしても喜んで応じるんだよ。縛っても、変なとこに指入れても、男を呼んで乱交プレイをしても、最後は色っぽい声を張り上げて、すごいんだよ」


「嘘よ。家を出て冒険者になるためには、本家の人間に身体を差し出せば何とかなるって・・・」

「あなたの魔法があれば、あんな男達なんかどうにでもできたでしょ。結局、意志が弱くて流されやすいのよ。男にヤられても、イヤイヤ言いながら、四つん這いで腰を振ってたじゃない。この変態!」


「う、うう、ううう」


「ナリス、ナリスってうるさいから、ジュリアに言ってダンジョンに誘い込んで始末したのに。私と一緒に帰るどころか、ナリスの妹を守るとか言って貴族殺しまでやるし・・」




「え」

聞き捨てならない。

「なに、それ・・」



「ふふん、ユリナ。別にダルクダンジョンのお宝探しはあなた達4人にやらせる必要はなかった。崖の上からジュリアの火魔法で岩トカゲを掃除して、私の土魔法で道を作って斥候職の人間に探させれば良かったのよ」


「な、なら、なんで、なんで」


「私のシクルを誘惑したナリスを絶望させて始末したかったのよ。私のストーンニードルもナリスの胸にドストライクで突き刺さったでしょ」


「わ、私が中途半端だったから、ナリスが死んだ?」

シクルの顔がなおさら青い。



「シクルが私のとこに帰ってくるかと思ったら、次は同じ顔をした妹にメロメロ。今度はお姉ちゃんと違って、あなたの変態プレイに付き合ってくれたのね」



「黙れ・・」


「ユリナ、あなたは私とシクル、ナリスの三角関係に巻き込まれたのかな」


「だ、ま、れ」


「無能だった癖に、スキルを手に入れたからっていい気にならないの」



「・・お前らの痴話喧嘩も策略もどうでもいい。私の友達3人が死んで、殺したのがお前達6人。それだけが事実だ」


「やる気ね。私もイラついてるの。カスガ男爵家の水のウインと仲良くなって、次男マルタを紹介してもらった。長男推しのウインが長男共々潰れたからチャンスだったのに」


「それが何だ」


「次男マルタを操れるかと思って近付いたのに、シクルが殺しちゃった。ヤらせてあげたのに、損したわ」


「クソビッチは死ね」


「次男マルタから情報はもらったわ。あなたは回復だけでなく、不思議な攻撃手段も授かったようね」


スターシャが出したのは3メートルの槍。本来はショートソードを使う女だから、私相手に近接戦闘は危険だと聞いていることになる。


「マルタをあおって「火剣」の三兄弟まで動かしたのに、ターニャは生きていてユリナも捕獲できず。今日も「火剣」の奴らに注意しに来たのに、もう死んでるんだもの。侮れないわね」


怪我をして魔力が枯渇する寸前のシクルは、あてにしてない。



その時、ターニャが私の横に並んだ。


目を見てドキッとした。


「ユリナさん、あの人は許せない。お姉ちゃんの仇を取る力を貸して下さい」



2年前に両親を亡くし、カナワの街に出ても、どうしていいか分からなかった私。そんな私を支えてくれたナリスと同じ目をしていた。


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