第6話 無双じゃないけど負けない
冒険者1を無力化した。早速、冒険者2が殴りかかってきた。
左からのパンチ。
「ぐほっ」
避けられんわな。きれいにもらった。
ここに来れる冒険者のパンチは強烈。
だけど10階で食らったオーガの正拳に比べたら軽い。
転んだ私だけど『超回復』がパッシブで効いている。
ノーダメージで起き上がって、剣を振り始めた。
私の剣技なぞ冒険者達に通じない。
包囲の輪は狭まった。冒険者5が私の剣を持たない左手をつかみ、後ろにねじ上げた。
私は剣を振ったが、剣先は自分の腹に向けた。
ドスッ、ドス。「なっ」
驚いたか。私の意図なんて分かるはずない。
「等価交換」
怪我を修復する材料。みんな冒険者5が、私をつかむ手からもらった。
「あ、手が、指が」
私をつかんだ両手が皮だけになった。冒険者5の手を振りほどき、剣で側頭部を斬りつけた。
なんて効率が悪い戦い方。
だけど確実に敵を減らせるし、負けるとも思えない。
「なんで逆転されてんだ」
「あの女、自分の腹を刺したぞ」
怯んだ冒険者達に剣を振りかざすと、向こうも剣を抜いた。
カルナが止めた。
「こら、生け捕りだって契約でしょ」
「カルナさん、そっちこそ契約違反だろ。女は何をしても復活して、少しずつ仲間もやられてる。肝腎なことを隠してるだろうが!」
彼らの会話を聞きながら、まっすぐ冒険者7に突っ込んだ。
ゴスッ。
見事な上段の剣で頭を割られた。
『超回復』
目の間まで頭に食い込んだ剣、瞬時に押し出した。
体が治る。同時に、身体が縮む感覚。
『超回復』が唯一、物理に作用するのは、この剣を押し出した作用。
タイムラグありでも、身体を治すとき、体内に止まっている異物を強制的に押し出す。
冒険者7よ、頭蓋を割って終わったと思っただろう。
甘い。剣を上に弾かれて、万歳の格好になった。
私は彼にタックルして右足首をつかんで、「等価交換」を意識した。
どうも器官によって治すエネルギー量が違う。それが半月間の検証。
脳の修復なんて、大量の栄養が必要だ。
いきなり足首が曲がり、後ろに倒れた冒険者7の前に立った。
頭を割られたときに落とした剣を拾い、冒険者7の無事な足を刺した。
「3人目」
「ぐわあああ!」
残りの男達がパニックを起こした。
「なんで頭蓋を割られた女がピンピンしてて、斬ったマイクが倒れたんだ」
「う~ん。呪いのスキルかな」
「う、嘘だろ」
「次はあなたね」
「嫌だ。俺は降りる!」
元気な奴らは、ダンジョン内なのに逃げていった。
やっとカルナと対決できる。
奴は収納指輪から、曲刀を取り出した。
風魔法の効力を強めるとか言ってた。
「収納指輪か。いいもの持ってるわね」
「あなたのような貧乏人には縁がないものよ」
「だね。だけど今から手に入る」
「私に勝つ気なの?」
「殺して、収納指輪を慰謝料代わりにもらうよ」
カルナは風魔法の適正B。ウインディトルネードが使える。
敵を風の渦に閉じ込め、風の刃で攻撃する。
『超回復』があるから強気なことは言ってみた。
けど、首をはねられ、切り刻まれた時はどうなるんだろう。
魔法だけではない。
すべての技量において劣っている私は、もらった回復力頼み。
考えても仕方がないので、カルナに近付いた。
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