第5話 初の対人戦

早くも、1人目の復讐相手を見つけた。


といっても、ダンジョンに落ちて15日は経ってる。



『超回復』はトンデモスキル。


この作用、強くなる要素はない。代わりに、簡単に死なない。


高レベルのオーガ、リザードに見つかり、食われたり殴られたりした。


そのたび回数無制限で『超回復』


こっちが殴っても効かない。けど、敵が触れてくれれば勝ち。


「等価交換」発動。

オーガの拳、リザードの牙から徐々に栄養を奪う。


自分を修復させて、同時に相手にダメージを与えていった。


魔物の皮を奪ったときだけ、相手によって私の体色も変わった。


私の強さも少しだけ変動する感じ。


握力が2キロ増える程度の感覚だけどね・・


蛇の青い鱗はもうない。


食われ、外傷を負う、どんとん剥がれてなくなり、もう皮膚は普通の色。


削り合いの連続だった。そうやって地上に向かって1歩ずつ進んでいた。


おっと、話がそれた。

何回も死んでて、変に図太くなった。


見つけた復讐相手。ジュリアの仲間の「風のカルナ」


単独ではなく、冒険者10人と一緒。雇ったのか子飼いなのかは知らない。


おしゃれ好きのカルナは、今日もブルーのミスリルインナーから派手。


装飾入りの防具セットを着けている。


ここは特級ダンジョン8階。


見晴らしがいい。荒野フィールドのど真ん中だもの。


奇襲に向かない。


そもそも私はスキルを考えても、奇襲なんて捨ててる。


先に向こうが気づいているし、堂々とするしかない。


私の格好はカルナと真逆。


ボロボロになった鎖かたびらがワンピース。裸に直接着ている。


装飾はないから、隙間から乳首をチラ見させてる。


これしか着られないから、スケスケ鎖かたびらなのである。


露出狂ではない。


2日前に見つけた白骨死体から拝借した物だ。


同時に綿のグレーのジャケットとズボンも頂いた。


だがなんと、服の材料は「有機物」だったようだ。


服を着てるんるん。直後、オーガに不意打ちを食らった。


いきなりパンチを食らって顔面が砕けた。


『超回復』オート発動。


パニクってた私は、反射的に、何も持たず「等価交換」を唱えてしまった。


すると丸裸。


等価交換の材料に服が使われた。麻の服が「有機物」ということが判明した。


貴重な物資を犠牲に、得た情報だ。


鉄は検証の結果、有機物でないと判明。


「カルナこんにちは。いい天気ね」


「このフィールドは常に晴れよ」

「そう、初めて来たから知らなかった」


「それより、剣1本に鎖かたびらだけ。お尻も見えそうだわ。あなた、よく生きてたわ」


男たちが散開し、綺麗な円で囲まれた。


ケツが出てる。


真後ろのやつが気になって、前屈みになれない。


「たまたま、生き残れた」


「祠で何を見つけたの?」


「逆に聞く。私たちを犠牲にして何を探してたの」


「底辺冒険者には関係ないわよ」


「ふ~ん。アレを手に入れるためだったんでしょ。私の友達3人は、そのために殺されたのね」


「ユリナ、あんたがこんな危険な場所で半月も生き残れるはずがない。何を手に入れた!」


「身長146センチ」の私は返事をせず、カルナとは反対側の男に向かって走った。


「殺しちゃダメよ。生け取りにして」


ラッキーだ。


捕獲なら、素手で触ってくれる。


男たちは高レベルダンジョンに入るほどの冒険者。


技術もない私の剣を軽々とかわし、私の右手首を掴んだ。


「残念だったな姉ちゃん。こんな簡単な仕事でボーナス金貨20枚は美味しいぜ」


「等価交換」ぱちっ。


「ぐ?」


冒険者1は左手に異変を感じ、私を離した。


もう手遅れ。


奴の手は骨と皮だけでカピカピになっている。


『超回復』、「等価交換」で、こいつの左手から修復材料をもらった。


ぱちっ。


身長は146センチから瞬時に160センチに戻った。


少し前屈みになれば、相手からよく分からない。


尻は寒い。


残念ながら私の通常攻撃は、はるか格上の敵しかいないダンジョン10階と9階では通じなかった。


役立つのは「等価交換」のみ。相手の肉を奪うのみ。


今回は、こいつらを見つけた瞬間に仕込んだ。

自分の強みを生かすため、自分の腕を斬りまくった。


痛みにも慣れつつある。


傷を治すのに自己の肉を使い、体が146センチまで縮んだ。


冒険者1が私をつかんだ腕から修復用の栄養が流れ込んだ。


「うで、うでが・・」



身長14センチ分の「材料」を取られた男の腕。あわれにも、皮と骨だけ。


力なく垂れている。


肩も反対側に比べ、ふた回りくらい小さくなっている。


「ゴンザに何をした!」


冒険者2が殴りかかってきた。



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