穴の2 なにこれ

月曜の朝は雑巾みたいな不快な臭いで目が覚めた。起き抜けに臭いの元凶を探してみたが特に変わったところは見当たらない。


仕方が無いから僕は換気扇を回してコーヒーをいれる。コーヒーの香りが部屋に広がるころには、雑巾の臭いはわからなくなっていた。


トーストをセットして洗面所に立つと胸には相変わらず青い穴が空いていた。


あらためて穴をまじまじと見つめて観察してみる。


ソフトボールほどの大きさの青い穴。


それ以外の新しい発見はなかった。


「あ…」


そういえば昨夜、穴に触ってみようとしていたことを思い出す。


今度こそはと恐る恐る穴に指を近づけた。



ぎゅぅおんおんおんおんおんおん!!



「な、なにこれ!?」


穴はバキュームカーのような勢いで僕の手を吸い込もうとしている!!


よく見るとわずかにパクパクしているようにさえ見える。


左手の手首を右手で掴んで僕は穴から自分の手を救出すべく格闘した。


「んおっ…ちょ、ちょっと…離せよ!!」



とぅうーん…

 

僕の叫びが届いたのだろうか?

スイッチを切った時の掃除機みたいな音を立てて穴は吸込みを中断した。


僕は激しく打ち鳴らされる心臓の音を聞きながら床に座り込んだ。


「なにこれ…?」


いつのまにか汗だくになった自分の胸を凝視していると焦げたトーストの臭いが漂ってきた。

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