(二)-3

 学校の勉強はあまり好きではなかった母・素子は、娘に何をさせるべきかについてはまるで知識がなかった。そもそも受験にも興味がないくらいであったし、何よりも父は稼いだ金の多くを酒に使ってしまう人間であったから、生活はずっと楽にはならなかったこともあり、塾へ行かせるという発想も、それに費やす金もなかった。だから母親は夫から殴られないよう、学校の成績を上げるために、宿題と、学習参考書を買い与えて丸暗記するよう教育した。

 子どもの直美も、勉強のやり方などわからずに、それが当たり前の事だと思って受け入れた。家に帰ると勉強ばかりするようになった。テレビを見て過ごす母の隣で宿題をして参考書を読むようになった。

 学校の成績はそれで十分上がった。なにせ学校では教科書や参考書の範囲の内容をそのままテストに出されるからだ。


(続く)

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