第8話 あんこのお留守番

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【前回までのあらすじ】

AI翻訳機によって話せるようになったあんこ(♂)。

自分の意思を人間に伝えられるけど、人間の言葉は分からない。

猫からの一方通行のコミュニケーションは人間界でどこまで通用するのか?

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やばい、止まらない、どうしよう、おこられる、でも楽しすぎる、止まらない・・・


パンデミックになってから誰かは家にいたが、この日はたまたまみんなが出かけたのであんこはお留守番だった。


小さな空間にある白い柔らかいものを興味深く触っていたが前両足を使ってカリカリしていたらどんどん白いものが下に落ちていく。


「愉快でござる、最高に愉快でござるぞ」


ママは翻訳モードを付けたまま外出してしまったので、お留守番中も一人で喋っていた。

しかも「殿様モード」という開発者の悪ふざけのようなモードになっている。


白いものが床に溜まっていき、もう無くなってしまった。


「もう終わりか、寂しいのう」


あんこは仕方なく小さい空間を出た。


少し小腹が空いたのでおやつにしよう。

あんこはおやつの棚に上って小さい戸を開けておやつを下に落とした。

そしておやつを好きなだけ食べた。


「世は満足じゃ」


あんこは散々家の中で遊びまわり、満足して寝てしまった。


「ガチャ」


「ただいまー」


この声はママだ。ママー!


あんこはママに駆け寄って行ったが少し後ろめたさも感じていた。


「ちこう寄れ」


「はいはい、お留守番ご苦労さん」


ママは家の中を見渡して「あんこー」とため息交じりに言った。


トイレの床にはボロボロのトイレットペーパーが散乱し、リビングにはあんこのおやつが散乱し、おまけに小さな植木も倒れて砂が散乱していた。


「面目次第も御座らぬ(めんもくしだいもござらぬ)。」

あんこは言った。

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