第3話 勧誘
目を覚ますと、側にはあの男がいた。
「目が覚めたか。」
一瞬で眠気が覚めた。
「僕を…どうするつもりですか?」
男は少し笑っていたが、次の瞬間剣をレオの首に向け、睨みながら話した。
「質問はこっちがする。お前は何者だ?」
(まずい!僕が『レオ』ではないことがバレているのか!レオを知っている人物なのか、それすらもわからない!くそ!)
「僕は…レオといいます。」
「そうか。俺はゲラルドだ。レオ、もう一度聞く。そしてもう一度しか聞かない。意味がわかるな?お前は、何者だ?」
「僕は…」
レオは悩んだ。ゲラルドが何かに属していることは確実であり、その力は自分が以前所属していた徒党よりも上であると感じたからである。
(本当のことを言うべきか…。どうすれば生き残れる…?自由に生きれる…?)
そして、レオはゲラルドの目をはっきりと見て答えた。
「僕はレオです。家名も何もない。スラムにいるただの孤児です。」
レオは退屈に生きることを何よりも嫌う。ここで死ぬなら自分の運はここまでだったのだと自分を納得させた。
ゲラルドは少し間を置いた後、剣をしまい満面の笑みで言った。
「そうか!ただのレオか!手荒な真似をして悪かったな!お前に興味があってここに連れて来たんだ!」
「ここは、どこですか…?」
「ここはな、盗賊ギルドだ!早速だがお前、盗賊ギルドに入らないか?大丈夫だ。団長には俺から何とか言っておく。何もないスラムのガキが生きていくのは大変だろ?ここなら仕事さえすれば生活に困ることはないぞ!お前は徒党にも属していないようだしどうだ!」
(僕に対する悪意は感じないな…。)
「少し考える時間が欲しいです。」
「いいぞ!待っててやる!」
ゲラルドは部屋の外に出ると思ったが、その場に居続けた。
「あの、外には出ないんですか?」
ゲラルドは笑って答えた。
「お前が逃げるかもしれないだろう?ここは3階で窓の外から落ちればひとたまりもないが、お前ならやりかねん!」
僕は苦笑いをして、考えに耽った。
(悪くはない。盗賊ギルドならば同情も湧かないだろうし枷になることはないだろう。1人で生きていくにも僕には足りないものが多すぎる。情報や知識、力を得たらここから出れば良い。だが、なぜかゲラルドには目をつけられている…。いや、気に入られているのか…?)
「あの、なんで僕を盗賊ギルドにいれようと思ったんですか?」
ゲラルドは笑って答えた。
「そりゃあお前がいい蹴りを放つからだ!それに盗みもうまいしな!使えそうな奴には声をかけるのがうちのギルドなんだ!」
僕はレオルドの答えに完全には納得できなかった。
(本当のことは言っている。嘘でもない。だが、もっと大きな理由があるのか、なにか引っかかる。)
「そうですね、盗賊ギルドに入らせて頂きます。よろしくお願いします。」
「そうか!団長に報告してくるからちょっと待ってろ!逃げようとするなよ?ま、逃げても無駄だけどな!」
豪快に笑うゲラルドを見送り、僕は考える。
(ここで一年、いや半年で力を得て次に行こう。ゲラルドには悪いが盗賊ギルドに心を捧げるつもりは一切ない。これは俺のための人生なんだ。)
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