第1話 レオと金髪の少年

「ここはどこだ…?」

目を覚ますと、ひどい頭痛と空腹感とともにこの身体の持ち主の記憶が流れ込んできた。

(この世界は…地球ではないな。この身体の持ち主の名前はレオ。家名は無し。ここはスラムか。レオは死んだのか…?わからない。少なくとも僕の意識がここにあるということだけが真実か。)

僕は頭痛と空腹感を忘れるように今起きていることを整理していた。しかし、そんな状況でもひどく興奮していた。

(僕は生きている。生きているんだ。)

「レオ…?」

不気味に笑う僕に服と呼んでいいかわからないほど貧相なものを纏った汚れた金髪の少年が話しかけてきた。よくみると顔は非常に美形だ。

(まずい、今の僕がレオではないことを知られたら面倒なことになるかもしれない。どうする…?)

「レオ、なんでそんな深刻な顔してるの?」

対処に迷いながらも曖昧に答える。

「ちょっとな。」

「レオ、何かあったの?僕らの徒党が大変な状況なのはわかってるけど、いつもみたいに笑ってほしいな。」

(めんどくさいな。さっさと離れるか。)

「ごめんね。君の知るレオはもういないんだ。僕はここからいなくなるよ。じゃあね。」

僕は冷たく言い放ち、ここから立ち去ろうとすると、金髪の少年は驚いた顔をしながら僕の腕を掴み、笑いながら話し出した。

「え…?何言ってるの?てゆーか、なにその喋り方。いつもと全然違うじゃん。それに僕って。貴族様みたい!でも、決めたんだね…。じゃあ僕も一緒に行くよ。いつも話してたもんね。2人で世界を旅するんだって。」

「ダメだ。一緒には行けない。」

「え…?」

金髪の少年は驚き、僕を睨んだ。

「なんで…?一緒に行くっていつも言ってたじゃん!!約束したじゃん!それなのになんで!僕はこの日のために生きてきたんだ!人のものを盗んででも悪いことをしてでも生きてきたんだ!それは希望があったから!レオっていう希望があったから!!!」

僕は悩んだ。

(もう『レオ』という人間が完全にいないことを言ってしまおうか…。スラム街の子どもに言ったところで何も起こらないだろう…。いや、だめだ。これは誰にも言ってはいけない。何かの拍子で権力者に伝われば僕の異世界の知識をしゃぶり尽くされるかもしれない。これだけはダメだ。)

「君に興味がなくなったんだ。だから僕は1人で行く。君も生きてればまた希望が見つかるよ。いつかレオに会えるといいね。じゃあね。」

(申し訳ないけど無理してでも僕は1人でいくよ。)

少年の腕を振り払い、僕は走りだした。

振り返ると、金髪の少年は絶望したような顔をしていた、

僕は即座にこの場から立ち去った。悪いことをしたとは思う。罪悪感でいっぱいだ。でも僕は『レオ』では無いのだから仕方がないだろう。自分を強く正当化しながら僕は走った。



金髪の少年は泣きながら自分にしか聞こえない声で話す。

「……そっか…。興味が無い、か。辛いなぁ。レオ、どうしちゃったんだろう。いつかレオに会えるといいねってどういう意味なんだろう。」

少年はそれでも涙を拭いて前を向く。

「でも生きなきゃ。いつか生きてレオにもう一度会って、言ってやるんだ。僕はレオの○○なんだって。」


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