第4話

ピピピピピピピピッッッ!!


目覚時計めざめとけいのけたたましい音で目を覚ます。

あれから2年。俺は15となった。


あの男、マーリン・ベル=ブレイズと名乗った男によってはこのブリジア王国に来た。と言っても来たのは1年前。1年間俺は修行の旅と称して各地の戦場を渡り歩いていた。東で合戦があれば東へ。西で侵略戦争があれば西へ。南で魔獣が暴れていれば南へ。北で内戦があれば北へ。

東西南北転々とし、戦い続けた。実際まだ戦っている予定だったが、1年前連行された。

曰くもう待てん、と。


もともとマーリンとは契約上の関係でしかないのだが、何を考えたのやら養子にすると言い出した。そのため、今の俺はブレイズ家の者だ。


「にぃ、起きた?」


物思いに耽っていると、扉が開く。

入ってきたのはあの男と同じ白い髪で紫色の瞳を持つ少女。


名をアリステラ・ベル=ブレイズ


マーリンの娘だ。


「あぁ、おはよう。アリス」

「ん。リリィがご飯作ってる。降りてくる」

「承知した」

そう答えてアリスには先に降りてもらった。

ささっと着替えて降りる。


「あ、リツ兄さん。おはようございます」


灰色の髪で、淡い朱色の瞳。


リリステラ・ベル=ブレイズ。


アリスの妹で、マーリンのもう一人の娘だ。


「おはよう、リリィ。今朝の朝餉あさげも美味しそうだ」

「えへへ、ありがとうございます」


席につき合掌する。

律神りつか・ベル=ブレイズ。それが今の俺の名だ。

戸籍上長男だが、極東人の俺は一目で血の繋がっていないことが分かる。なのに兄として慕ってくれる二人は、今ではかけがえの無い家族だ。


「にぃ、父さんは?」

「いや、知らないな。またか?」

「たぶん、そ」


二人から聞いたところによると、マーリンは定期的に何も言わずに出ていく様で。帰ってきたと思ったらお土産携えて帰ってくるそうだ。流石に兄がお土産は驚いただろうけど。


うむ、今日もリリィのご飯は旨いな。


「にぃ、明日だけど準備は大丈夫?」

「む、明日?何かあったか?」

「………はぁ。一応聞いといてよかった」

「リツ兄さん、明日は––––」


主達あるじたちの入学式でしょ』


リリィの声に被せる様に発せられた声。

その声の主は、いつの間にか降りてきていた黒猫からだ。


「あ、ルナ。おはよう」

「おはよ、ルナ」

『ん、おはよう。リリィ、アリス』


この子の名はルナ。幻霊種エイドスの月猫族。

幻霊種エイドスを詳しく話すと長くなるので、またの機会としよう。


「おはよう、ルナ」

『おはよう、あるじ

「ルイシャは?」

『あの子ならそろそろ起きて–––』


『ぉはよー……』


『ほら』

「ほんとだ」


気怠げそうな声の元は白銀に輝く子竜。

名はルイシャ・ディアデーマ。竜神族ドラゴニアの中でも珍しい【冠ノ竜】だ。


–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


ディアデーマ:ギリシャ語で『冠』を意味する

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る