野菜と肉と薬草の葉巻き1

 街に戻る冒険者に師匠はコウモリに調理を施し「何かあったら食え」と全て渡す。


「いいんですか?」


 剣士は申し訳なさそうに受け取ると師匠は微笑しながら返す。


「あぁ、こちとら事情があってな街にはしばらく戻れない。気分変わったら一般人に料理を降るまいに戻ってくるが今はどうだろうな。なぁ、小娘?」


 魔法使いと吟遊詩人に撫で撫でされているハクは嬉しそうに手を上げ「あい、ハクちゃん旅に出るのです!!」と師匠の背に抱きつく。


「そう言うわけだ。達者でな、冒険者」


 冒険者を見送り、師匠は「次のゲート行くぞ」と街とは反対。森ではなく今度は山を目指す。


「ししょー、どこ行くんですか?」


「適当にゲートを回る。俺らなら最終付近まではクリアーしてるから好きなときに好きなだけ入れるはず。なら、ドロップ狙いであっちこっち行ってみるか。ついでに――一人ずっとついてきてくる奴がいるからな」


 師匠の言葉にハクは「まさか、リリアックさん!!」と周囲をキョロキョロと見渡す。それに「違う。あのバーサーカーだ」と師匠は足を止め後ろを振り向く。


 木々繁る山道。


 時よりモンスターの声がするが人の気配はない。だが――殺気は感じていた。獲物を見るような鋭い目付き。針のような視線にハクは上を向くと木に腰掛けたバーサーカーが一人。

 モンスターの腕を食い千切り、クチャリクチャリと下品な咀嚼音。師匠に目を向け、ハクに目をやると腕を投げ捨て地に降りる。


「そこの――」


 と、バーサーカーが声出した瞬間――師匠の鍋蓋がバーサーカーの顔面にめり込んだ。


「えっうぇぇ!? 大丈夫ですか!!」


 顔面に鍋蓋が当たり倒れるバーサーカーに駆け寄るハク。気絶か、ユサユサと揺らし「あの、起きてください。し、師匠がすみません!!」と起こそうとするも反応無し。


「ハク、ほっとけそんな奴。狙いはお前だ。掟とやらで追放されたお前を殺しに来たんだ。助けなくていい」


「でも……」


「気になるか?」


「師匠、この人……」


「知り合いなんだろ。そんなの出会った初めの一言で分かる」


 気になり動かないハク。「仕方ない」と師匠はバーサーカーを担ぐ。

 歩き出し、広目の場所を見つけ、バーサーカーを寝かし「薬草をくれ」と差し出す師匠の手に薬草を置くと「ったく、こいつもコイツだ。ボロボロになりながらもお前のこと影から庇ってる。コイツとはどういう関係だ」と少し苛立ちながら話を切り出す。


「私より少し年上のバーサーカーさんです。村に残っていつも村のために狩りを任されていたのですが、『ゲートに挑戦してこい』って親か長老に言われて一緒に村を出た人の一人です。優しいお兄さんなのですよ。ちょっと獣臭い人なんですけど」


「名前は?」


「ゼゼです」


「ゼゼ、か。はぁ……あんまりこう言うと言いたくないが。【追放者】と手を組むと組んだ奴らも【追放扱い】になると話に聞いたことがある。冒険者に関しては、またまた遭遇したから手を貸したが【追放】に煩い輩の目や耳に入ると厄介だ。これからの人と手を組むときは気を付けるように。分かったな、さっきのは俺の自己判断だが――思ったより怪我が酷いな。服脱がせ、マジックシート敷く」

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