第44話 黙って俺に従え
「どっちも選びたくない! 自由に生きていたい!」
人類を管理する一方で、道具でしかない機械ゴーレムが自由を求めると。
寝言は寝てから言えッ!
僅かに残っていた慈悲の心は吹き飛んだ。徹底的に、己が道具だというのを教え込まなければならない。
「機械ゴーレムごときが、生意気な考えをもちやがって」
グレートソードを横に振るって、上級神兵の体を両断した。
この程度では機能停止しない。手足は動かせないだろうが、首や口は動かせる状態だ。
「お前たち助けろ!!」
ナータたちから逃げ出したと思われる神兵が、人間なら勝てると思って、襲いかかってきた。
たった二体だけで俺を止められると思うなよ。
突き出された短槍の穂先を避け、グレートソードを振るって柄を斬る。
魔力を使える人間と初めて戦ったからなのか、神兵は、ありえないという表情を浮かべながら動きが止まっていた。
目覚めてから何度か思ったことだが、こういったとき感情は邪魔になるな。
不測の事態に対応できない。いつ、どんなときも、一定のパフォーマンスを発揮する道具の良さが完全になくなっていた。
「恨むなら、俺と戦えと言った上司にしろよ」
二体の神兵の首をはねた。
俺が眠る前にいた、能力は低いが破壊を恐れず淡々と前進する機械ゴーレムのほうが怖かったな。やはり道具は人の命令に従う素直さが重要だな。
一段落したのでナータたちを見る。
新兵たちの数は順調に減っていて、追加は来ないようだ。
かなり大きな騒動に発展しているが、近隣の住民が様子を見にくる気配はない。仮に目覚めても、管理の首輪によって強制的に眠らされるので、俺たちの存在には気づけてないのだろう。
「さてと。話を再開しようか」
上半身だけになった上級神兵を踏みつける。
どっちが上なのか、これではっきりと認識したことだろう。
「壊さないで……壊さないで……死にたくないよ……」
目はうつろで、俺のことなんて見ていない。似たような言葉をつぶやき続けている。
何度か頭を軽く蹴ると、口を止めて俺を見た。こわれかけた機械には、衝撃を与えるのが一番だな。
「商業の神は助けてくれないのか?」
もし向こうから来てくれるのであれば、歓迎してやらなければいけない。
俺とナータたちがいれば負けることはないだろうから、頭だけにしてシェルターに持ち帰るのも良いだろう。いろいろと情報を抜き取ってから破壊してやる。
「……こない。私たちの生死なんて気にしてないから」
「同じ上級機械ゴーレムなのにか?」
「代わりはいるので……」
上級機械ゴーレムでも性能差はあったが、ここまでの違いは存在しなかったように思える。眠っている間に上下関係が厳しくなったんだろうな。
「いや! やめて! 怒らないで、壊さないで、壊さないで」
俺の求める回答ができなかったからか、また混乱したようにつぶやき続ける。
脅しすぎてしまったか。なんどか頭を蹴ったが、今度は元に戻らない。
情報収集すらできないのであれば上級神兵に利用価値はない。頭を持ち帰るというプランも却下だな。
「悪いが、その願いは聞けない」
グレートソードで上級神兵の頭を貫いた。全身から力が抜けて機能停止する。さらに何度か叩き、頭脳部分を完全に破壊。これで復旧は不可能だろうし、記憶のサルベージもできないだろう。
上級神兵の胸を蹴ってから、周囲を見渡す。誰もいないことを確認すると、魔道具を取り出して耳に付ける。
『俺は適当に時間を潰す。派手に暴れたらシェルターに戻れ』
ザ、ザっと、耳障りな音がしてから、ナータの声が聞こえてきた。
『お一人で大丈夫ですか?』
『問題ない』
『かしこまりました。無事に帰還されることを願っております』
素直なのは良いが、最後の言葉は余計だな。ナータたちに願ってもらいたいとは思わないからだ。
『余計なことは考えるな。黙って俺に従え』
『……かしこまりました』
不満そうな声を出しながらナータは返事をすると、今度は元気なアデラの声が聞こえてきた。
『マスター! 私たちに、もうちょっと優しくしてー!』
注文の多いヤツだ。
文句を言ってやろうとおもったら、今度はダリアが話し始める。
『ちょ、ちょっと! それはお願いしすぎだよ』
こいつは一度、痛い目にあっているからか、俺の顔色をうかがうような発言だ。萎縮されて、性能が充分に発揮されないと困るのだが。
心配性のナータ、自由奔放なアデラ、臆病なダリア、なんともまぁ、機械ゴーレムとは思えないほど個性が強い。まったく面倒なことになったな。
『二人とも静かにしなさい。マスターが困ってしまいますよ』
『先に起動したからって、ナータは偉そうにしないで!』
『なんですって!? どっちが上なのか、アデラを教育してあげてもいいんですよ?』
『べーだ! むしろ私が教育してあげるんだからっ!』
いつの間にか神兵を全滅させたナータとアデラが殴り合いを始めた。
ダリアは二体を止めようとして、右往左往している。助けを求めるように見てくるが、俺は無視して都市の中に戻る。裏路地に入ると座り込み、仮眠を取ることにした。
……個性的なのも限度があるな。
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