このレビューを書いている時点での本文は2030文字。
数字で表せばささやかな文字数だが、そこには作者の人生のその時間が、そっくりそのまま加算される。
就学以前の揺籃の時代から現在まで、実に築五十年になる家の歴史に重ねながら作者とその家族の歴史を描き出したエッセイ。
祖父母から父母、父母から作者本人、そして作者からそのご子息……交代する世代と、役割を果たして退場していった人々。
年代記的に浮かび上がる、いくつもの人生の場面。
たった2030文字。
しかし作者のこれまでがなければ生まれ得なかった2030文字。
ここにあるのは五十余年+2030文字のエッセイである。