第171話 戦地にて出会う男達
砂煙が徐々に近づいてくる。
全体的に扇型に広がる陸に設置した堤防の様な壁が数キロとその延長線は岩を積み上げた石垣が誘導壁がわりに並ぶ、
中にはスタンピードの勢いを殺す為の障壁が乱立し、小型は隙間を通り進めるが、中型・大型は迂回を余儀なくされる仕組みだ。
中間の左右の大壁にはバリスタが並び、迂回してモタモタしている魔物を狙い、
小型は無視で進ませる。
たとえ進んだとしても、
先に待つのは袋小路と奈落迄続きそうな大穴が待つのみ、左右から魔法や弓を射たれ、徐々に狭くなる進路に引き返す事も叶わない設計だ。
ワイバーン騎士団は、上空から岩を投下し、岩が無くなれば周りにあらかじめ積んである岩の山や、石垣をアイテムボックスにしまい、再び空に向かい、大型の魔物を殲滅予定でスタンバイしている。
中間辺りの外壁の外に頑丈な砦を追加で設置し、〈念話レッドキャップ〉の中継器と、治療院を設置し、アドラとメレクの魔族兄弟を〈ライフヒール〉担当で配置した。
中間の障壁の上でサンに乗り、両脇にパパンとテオを従え、
ドラグーンナイトのヤングとマーズ、ケルトとマギーの四人と、
弟子のペガサスナイトのブルーとアースでチームを組む…
正規騎士団は白い鎧に真っ赤な鉄帽子のマヨネーズカラーの鎧を纏い、部隊毎にマヨネーズの小瓶の旗を掲げている。
志願騎士団は革鎧や旧騎士団の装備を纏い配置についている。
そして、遂にブルーがブラックさんの形見の装備を纏い、サンダーに騎乗している。
〈ブラックさん、見てますか?
息子さんはようやく貴方の形見が使いこなせる一人前になりましたよ。〉
と心の中で語りかける。
皆の勇ましい姿を眺めながら、
数を数えるのも嫌になるスタンピードの大集団の接近を待つ…
俺は〈念話レッドキャップ〉でリーダー達に
〈もうすぐ、戦いが始まる。
俺たちは群れの最後尾に向かう為に念話は届かなくなるだろう…
以後の指示は前線のワイバーン部隊はノーラ騎士団長、
中間のバリスタ師団・魔法師団はガルド騎士団長、
後方の魔導砲台と志願騎士団の魔法隊と弓隊はレクター司令官の指示に従って下さい。
親方バリアー隊は、バリスタと魔導砲台の守りと、もしもの場合の壁の修復・追加をお願いします。〉
と伝えて、
「いくぞぉぉぉぉ!」
と叫び、
「おぉぉぉ!!」
と、こだまする声に押し出される様に空へと飛び立つ。
最初の仕事は〈ドラグーン〉で群れを扇状の戦場へと追い込み、
スタンピードが反れない様にする事だ。
地鳴りを上げて進む先頭集団は、足の早い鹿や馬や兎等の魔物、
奴らさえ誘導出来れば、後ろの集団は〈アッチに逃げれば安全〉と思い込み後に続く。
そうなれば、後は騎士団長達に任せて、俺たちは最後尾を目指せる…そこからが俺の本当の戦いだ…
先頭集団を左右から追い込み、扇の中に目掛けて誘導すると、
先頭集団はまっすぐ我が軍が待ち構える戦地に進んで行った。
「よし、第一段階は成功だ!
先頭集団は任せて元凶を止めに行くぞ!」
と指示を出して、森をなぎ倒し進む魔物の群れの上を最後尾に向かい飛ぶ、
凄い量の魔物が眼下に広がる…
ボア類やオークにゴブリンは勿論、
コボルトや狼や牛に大トカゲと見慣れたものから、象や虎、カバみたいなヤツにデカい蛇など珍しい魔物も走っている。
後方には地竜に頭が3つの蛇みたいな巨大な魔物が複数と、緑色のドラゴンも混じっている。
アイツが最後尾か?
と一瞬考えたが、〈グリーンドラゴン〉の後方に、
右足に白銀の足輪をつけた漆黒のドラゴンがノッシノッシと行進していた。
〈ドラゴンがビビるドラゴンって何だよ?〉
と心の中でツッコミを入れるが、すぐに〈ヤツ〉が居る事を思い出す。
あまり低空でウロウロするとヤツの魔導銃の餌食になるかもしれないが、近づかなければ人間サイズが見える筈がない…
上空からサーチが届くギリギリの高度をトップスピードで飛び回り、反応が有る場所を絞りこむ。
周辺を飛び回る俺達を鬱陶しく感じた漆黒のドラゴンが空中に禍々しいブレスを吐く、
スピードで勝るドラグーンやペガサスは何とか避けているが、当たればただでは済まない…
しかし、射程外に逃げれば、急に興味を無くした様に歩き始めた、
異様な行動パターンに違和感を覚えるが、〈松下 竜司〉を探して範囲を広げる。
すると、漆黒のドラゴンのかなり後方に、30近い反応が有った。
〈見つけた!〉
漆黒のドラゴンは接近しない限り攻撃はせずに行進を続けているので、一旦放置して、ドラグーン部隊に〈グリーンドラゴン〉の討伐を任せる。
テオが、
〈アイツなら任せてくれ、俺らのファイアブレスが滅茶苦茶効くから!〉
と元気良く飛んでいった。
森の端に俺と弟子二人が降り立つ、
相棒ペガサスとサンを一旦送喚し、代わりに狼チームを召喚し、森の中を目標に向けて進む。
相手もサーチを持っている可能性があるので、出来るだけ広範囲に広がり、30人の反応を取り囲む様に配置にする、
〈バン!〉
と乾いた音がして隠れていた木に着弾する。
五十メートルほど迄近づいたが、ここから安全に近づくのは無理なようだ。
しかし、有難いことに周りの竜人達は〈魔導銃〉を保有していないようだった。
エトナ軍から押収出来た魔導銃はたった数丁だけで、あとは岩の下敷きで鉄屑になってしまったので、
もしも撃ち合いに成っていたら勝ち目が無かったかもしれない…
松下が、
「チョロチョロしやがって誰だ!」
銃を構えながら叫ぶ、
俺が、
「誰だ!とは寂しい事を言うんだな?
俺だよ、俺、マヨネーズだよ!」
と、木に隠れたまま、どこぞの師匠の様な大声を上げると、
松下が、
「そんな師匠の知り合いは居ねぇよ!」
とツッコミを入れる。
〈よし、会話が出来そうだし、完璧に日本人だ。〉
でも、ここからどうしよう…?
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