第122話 復興に力をかす男

アルバート伯爵様のお屋敷で、〈呪物〉と〈鉄地竜の死体×2〉を提出した。


伯爵様は、


「本来であれば、度重なる恩に報いる為に我が家で丁重にもてなしたかったのだが、避難民を抱えてそれも出来ない、


誠にすまん…」


と頭をさげた。


俺は、


「家族が助け合うのは当たり前でございますよ、義父様おとうさま


と答えると、


アルバート様は、


「では、今回はサラのおかげで助かったのだな…。


!ユウ殿、今回サラは来ておらぬのか?」


と聞いてきたので、


「スタンピードを食い止める為に空けた穴を土木魔法師の親方に埋め戻してもらっておりますので、その護衛に。」


と答えると、


「土木魔法師?」


と首を傾げるアルバート様、


俺は、


「帝都で試験を受け、合格した者のみが購入可能な建設用のスキル所持者のことです。


我がマヨネーズの街も彼らが作りました。」


と答えると、


「なんと、国王陛下やガイルス殿とは、〈アイテムボックス持ちは建材の持ち運びが早いから〉と話しておったのだが…


まさかその様な魔法が有ったとは、

驚きだ。


また、国王陛下から〈早く教えろ〉と小言を言われますぞ、ユウ殿。」


アルバート様はイタズラっぽい笑顔で俺に語った。


〈確かに言われそう…〉


「では、いま整地中の村に、簡易の石壁と仮設住宅を建てますゆえ、


国王陛下の小言が来そうな時は庇って下さいませ、。」


と微笑みかえした。


アルバート様は、


「では、ユウ殿、私も村の様子を見に行くゆえ、一緒に参りましょう。


サラにも早く会いたいですし…」


と言うので、迎えの馬車は後から来て貰う事にして、俺と〈サブロー〉に乗って、ワイバーン騎士団と共に村をめざした。


道中、アルバート様は、


「素晴らしい!」、「なんと速い!」と興奮していたので、


テイマースキル持ちと、ワイバーンが居れば案外すぐにできます。


とだけ説明しておいた。


アルバート様が〈高所恐怖症〉でなくて良かったよ…


行き帰りで数日経った村は、三人の親方とサラと騎士団員のアイテムボックスの力で、一日で穴は塞がり、


時間が余った親方達は、既に乱立している石壁を石レンガに変えて〈長屋〉を建てていた。


足りない木材はそこら辺の森の木を使い窓や扉はまだないが雨は十分凌げる状態だった。


「親方、ナイス判断!」


と俺が誉めると〈エヘヘヘ〉っと照れていた。


親方達に続きの作業をお願いして、


俺もアイテムボックスから〈魔石ランドセル〉を出していると、


サラが、


養父上ちちうえ、一番奥の山里のたった1人の生き残りでございますわ。」


と…


〈おっ、話し方が貴族モード…〉


と感心する俺をよそに、


アルバート伯爵様にあの幼い男の子を紹介し、出会った時の状況を報告した。


アルバート伯爵様は一筋涙を流して、


「サラよ、この子は私が引き取るぞ。」


と男の子を抱き上げる。


男の子はキャッキャと喜び、


その様子を見たアルバート様は、再び涙を流して、


「すまない、大人の事情に巻き込んでしまった…」


と慣れた手付きであやしている。


アルバート様はサラに


「この子の名前は?」


と、聞くがサラは、


「体を洗った時に時に服を調べたけど判りませんでしたわ。」


と答えていた。


あの子もアルバート伯爵様を気に入ったのかアルバート様の髭を引っ張っては、キャハハと笑っている。


〈お任せして安心だな…〉


俺は仮設住宅の周りに石壁を巡らせたり、井戸を掘ったりし始めた。


相変わらず親方達は物凄い勢いで仮設住宅を建てている。


アルバート様が俺たちの様子を見て、


「凄まじいな土木魔法師とは、

我が領地の復興にも数名欲しいところだ。」


と男の子を抱っこしながら感心していた。


俺は、


「マヨネーズの街で、勉強してから

帝都に向かい試験を受けて合格すれば

土木魔法が手に入りますよ。


しかし、建築の知識が無ければ私の様に木箱の様な家しか建てれずに、

もっぱら壁や穴掘りばかりの作業員に、なりますがね。」


と説明した。


アルバート様は愉快そうに、


「ユウ殿、そなたにも苦手な事が有るのだな。

なんだか安心したぞ。」


とニコニコしている


サラとワイバーン騎士団が近くの岩場で岩を集めて来てくれて壊された村の周りに岩をアイテムボックスから並べては、俺が〈接着〉スキルで石垣を作る。


ブルーが、


「僕もアイテムボックス欲しい…」


と呟きながらリオ達と周囲の警戒をしている。


〈ブルーすまない、マヨネーズの街に戻ったらアイテムボックスを買ってやるからね。〉



その日の夜は、

仮設住宅の炊き出し用キッチンのお試しも兼ねて、カレーライスを作った。


お子さま用はミルク等はでマイルドにした〈王子さま的な〉カレーにし、


皆で食べたのだが、アルバート伯爵様はカレーを食べる機会がなく、これが初体験だったらしい。


恍惚の表情で暫く天を仰ぎ、


「これが、ユウ殿の領地の名の由来の〈カレー〉ですか…」


と言ったので、


「はい、国王陛下に召し上がって頂いたカレーですが、

これは、その完成形〈カレーライス〉です。」


と答えた。


アルバート伯爵様は、


「えっ、〈ライス〉とは…

あの雑草の?」


と、聞くので、


俺は、


「あの、です。」


と、頷いた。


「ユウ殿…いや、ドラグーン子爵殿

土木魔法師と、このライスの栽培と調理を、学ぶ為に研修生の受け入れをお願い出来ないであろうか?


我が領地に小麦が出来難い地域があり食糧で難儀をしている寒村が南部に沢山点在するのだ…どうか頼む…」


と頭を下げるアルバート伯爵様に、


「お安いご用ですよ、家族ですもの」


と答えておいた。



その日の夜は、騎士団と親方達はテントで寝て、


俺達とアルバート伯爵様と男の子はマジックハウスで休んだ。


俺とサラ、伯爵様と男の子、ブルーとなぜかミーちゃんの部屋割りだ…


狼チームはダイニングの寝床で休む事になった。


アルバート伯爵様が寝るまえに男の子を今日出来たばかりのトイレに連れていき、


「チーしてごらん」とか「わー、上手。」とかやっている。


なかなかのイクメンの様だ…。



…その晩、俺はサラに抱きつかれながら寝たのだが、背中からではなかったので、意識してしまいなかなか寝付けなかった。


寝不足で目覚めた翌朝、疲れた表情の俺を見て、アルバート伯爵様や親方達がこっちを生暖かい目でニヤニヤと見ていたが、反論するのも面倒なので無視する事にした。

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