第121話 戦場に、おしかける男
アベル副団長と合流し、
〈呪物〉の事を話すと、
「他国からの攻撃の可能性があります。
早く国王陛下にお伝えする方がよいかと思われます。」
と言った。
サラに〈ピピ〉をまた召喚してもらい、
〈ピピ〉に、
「トーマスさん、国王陛下に大至急、
アルバート伯爵領にて〈呪い〉を使った〈人工スタンピード〉があり、
スタンピードは何とか止めましたが、村が大小合わせて3つ破壊されました。
呪物等は回収済みですが、
アルバート伯爵様か他国と戦の最中で不在であり、
時期的にもタイミングが出来過ぎておりますので、詳しい調査などの対応をお願いいたします。
と伝えて下さい。」
と覚えてもらい屋敷に送喚する。
親方達も連れて、防衛ラインの村まで戻り、魔物を散らす為に見張りをお願いしていたパパンとテオを送喚して
サラには幼子の子守りとワイバーン騎士団から一名を護衛にし、リオ、レイ、ミーには三人の親方の周囲の警戒をお願いするかたちで、
土木魔法師の親方に、穴だらけにした村の埋め戻しを依頼した。
ブルーには冒険者ギルドに報告をお願いし報告終了後にはこの村で子守りと護衛の手伝いをしてもらう。
俺とワイバーン騎士団はアルバート伯爵様の屋敷をめざした。
アルバート伯爵様の屋敷は先に避難させた村人の避難所になっていた。
屋敷の執事さんに、アルバート伯爵様の所在を聞くと、
〈屋敷から北へ一日半の場所にて陣を張っている〉
と教えてもらいワイバーン騎士団と共に向かった。
馬車で一日半だが、ワイバーンなら数時間で到着できた。
しかし、
ワイバーン騎士団を見たことがない伯爵軍の騎士団が、かなり慌てた様子だったが、
アベル副団長が掲げた我が家の紋章〈マヨネーズの小瓶〉の旗を確認して敵でないと理解し落ち着きを取り戻した。
アルバート伯爵様のテントに案内され、報告を済ませたのだが、
アルバート伯爵様は、
「例年なら数日の小競り合いも、今年はたいして仕掛けもせずに睨み合ったまま半月近くになる、
何かを待っている様だが…
まさかワイズ王国の奴らの仕業か?
それならば早く小競り合いを終わらせ、調査の後に会談なり武力なりでの対抗準備を整えなければならないが…」
と悩んでいる。
俺は、
「ウチのワイバーン騎士団で相手陣営を崩すので、攻撃終了と同時になだれ込み捕虜を捕まえて口を割らせますか?」
と提案し、作戦会議の後に、働き詰めの騎士団と俺は陣営で休ませてもらった。
翌朝、日の出と共に作戦を開始する。
ワイバーン騎士団は弓も魔法も届かない遥か上空からノーラ騎士団長の合図で、岩の雨を降らせる。
ドラゴンを相手した後なので、イメージが崩れたが、本来は数百キログラムの岩が上空百メートル以上の高さから降ってくれば、当たれば即死だ。
千人以上いた敵陣営が総崩れになるが、
立て直す時間おろか、状況を把握する時間も与えず、
アルバート伯爵軍がなだれ込み、敵を次々に捕縛している。
我々ワイバーン騎士団はマヨネーズの小瓶の旗を掲げて、敵陣を取り囲みながら飛び、逃げ出す敵に威圧をかけたり、魔法を打ち込んだりして援護をする。
昼前にはアルバート伯爵軍の完全勝利が確定し、
半月に及ぶ睨み合いが終了した…
その後、
アルバート伯爵様に、
「ドラグーン子爵殿が、捕虜を一人も残さずに〈皆殺しにするのでは?!〉と焦りましたぞ…」
と言われて、
「鉄地竜の後だったので、威力があんなに有ることを忘れておりました。」
と話す俺をみて、アルバート伯爵軍の面々がだいぶ引いていた。
確かに、戦場は大虐殺跡地に変わっており、あの岩の下にも沢山の亡骸があるかも知れないが…ほぼ形は留めてないであろう。
正直、やらかした俺自身かなり引いている。
捕まえたワイズ王国の貴族は、
「〈正当な王家〉に仇なす〈偽りの王の手下よ〉我らが王の裁きを受けよ!」
と、吠えている、
ワイズ王国は元々ウチの〈セントラル王国〉の一員で、ワイズ公爵が治める〈ワイズ公国〉だったのだが、帝国とのゴタゴタの隙をついて、ワイズ王国と名乗り、正当なセントラル王家は自分たちだと言い出したらしい。
何代か前のセントラル王国の王様は第二婦人の子供で、正妻さんは娘が続き、末っ子としてワイズ公爵が生まれたとの話だった。
第二婦人の息子の兄と正妻の息子の自分ならば、王に相応しいのは自分だ!
となったらしいが…
知らないよぉ、他所でやってくれ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます