第118話 弟子達の昇格を目指す男
全くもって面倒臭い一件から半年余り、
社交のシーズンを挟み、過去作品の処分や、奴隷商人との打ち合わせなど、ジェルバ公爵様が色々と手を回してくれた。
国王陛下も姪のしでかした事を重く受け止め、
〈乙女会とやらのメンバーを奴隷より一生解放しない約束〉で、
もしも他の貴族家と揉めた場合でも、国がなんとかしてくれる事になり一安心だ。
しかし、俺が全員を買い取ると何かの時に〈飛び火〉する可能性があるからと、
俺の領地に〈男爵家〉を作って隠れ蓑とする事をジェルバ様から提案された。
それなら、ガルド騎士団長の奥さん〈元姫〉ならギリギリ社交もこなせる。
となり、
騎士団のエリアの隣に新男爵の屋敷と印刷工場と出版社等が集まるエリアを作った。
シルビアーナ奥さまは、試しに作らせた〈表〉の作品、〈王国の国宝の武具達が人の姿になり姫の為に戦う物語〉をいたく気に入り、全面協力してくれた。
今では無事に、ガルド・アルバトロス男爵家の使用人兼出版社員として働いている〈元乙女会メンバー〉と、
ヒルダ嬢はシルビアーナ奥さまの直属の部下となり王国貴族と帝国貴族の違いに悩む奥さまの手助けをしている。
あとは
そして、
長かった社交シーズンも終了し、
喜びの春がやってきた。
従魔が発情しようが、増えようが、去年頑張ったかいもあり、従魔が出動出来ないトラブルも少なくなった。
むしろリオが産休明けで復帰して、
追加で子供達の中で将来リーダーにと、リオが押すメスの森狼を正式に俺の従魔とし、〈レイ〉と名付けた。
驚いたのは〈レイ〉達に魔物鑑定したところ既に、親の二匹と同じスキルを持っていたことだ。
魔物のスキルは遺伝するらしい。
両親から半分ずつだが、両親共に同じスキルなので、親のスキルと全く同じ〈ファジカル〉持ちの強つよスキルだった…
新発見だ。
後のリオの子供はサラとブルーに二匹ずつ預けた。
オス二匹はサラが従魔として、〈コッペ〉と〈サンド〉と名付けた。
最近ハマっている屋台メニュー〈コッペパンサンド〉からの命名らしい。
オス・メス一匹ずつはブルー君が従魔とし、オスを〈ガロ〉メスを〈リル〉とした。ガルとリオをギュッとして〈ガロ〉らしいが…飢狼とは…あのネーミングセンスが羨ましい。
師弟三人でマヨネーズの街の冒険者ギルドに足を運び、
ブルーのポイントが稼げそうな依頼を探す。
カレー州内ではワイバーン達の見回り等もあり余り魔物や盗賊の討伐依頼をほとんど見ない。
広域の依頼で他領地に出向くしか無さそうだ…
サラとブルーに意見を聞いたら、
ブルーは王都周辺しか解らないと答えたが、
サラが、「ここなら知ってる。」
と指差す先は、アルバート伯爵領からの依頼で、住み処から降りて来た二匹の地竜の撃退、
殺さなくても、住み処まで押し返せば依頼達成らしい。
「よし、これにするか!」
と、言って三人で受付を済ませ、アルバート伯爵領へ向かう事にした。
屋敷の広場でワイバーンとペガサスをそれぞれ召喚し鞍を装着させる。
俺はサブロー、サラはシロー改め〈エダマメ〉、ブルーは勿論サンダーに乗り、トーマスさんに見送られながら出発した。
サラは山田商店から買ってきた大豆をエダマメのうちに収穫したものを気に入ったらしく緑がかったシローを従魔にしたときに〈エダマメ〉と名付けたのたが…
サブローが凄く羨ましいがっていたのに俺は少し傷ついた。
お隣の領地だけあって領地自体には丸一日飛べば入れるが、アルバート伯爵領の領都まではまだ2日ほどかかる計算だ。
夜はマジックハウスをだして、三室あるので別れて休むのだが、
隣の部屋からサラの念話が飛んでくる。
〈兄貴と一緒にまた寝たいよ。〉とか
〈いつになったら結婚してくれるの?〉とか…
感情が溢れて駄々漏れているのかと思ったら、
〈兄貴、聞こえてるでしょ!〉
と叱られた。
暫く〈無〉になっていると、
〈寝たのかな?仕方ない…〉
と静かになったのだが、
そっと念話の指輪を外して、
〈すっかり忘れてたけど、サラは少し早いと思うが、ライザさんは適齢期とやららしいから、そろそろ何とかしないと…〉
三人には国王陛下の勧めもあり、王都の細工職人に作ってもらった婚約指輪を送っただけで、式の予定とかは全く決めてなかった。
〈こういった先送りする性格から、前世は結婚出来なかったのだろうな…〉
しかし、まずはブルーの昇級だ!
と思うが、
〈こういうのがダメなのかな?〉
とグルグル考えてしまい殆ど眠れず、
その次の日は、飛行中にうたた寝をして〈墜ちる?!〉と何度か冷や汗をかくはめになった。
居眠り運転…ダメ…ぜったい…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます