第14話 遠征にでる男
サラとガルが〈D級〉の昇級試験で数日別行動となり、
俺はリオと一緒に山岳地帯に遠征に向かった。
町から街道が続き定期馬車が、山岳地帯の入り口にある小さな村まで出ている。
片道で丸1日かかるのは仕方ないとして…
この世界の馬車は乗り心地が最悪だ、
小石を蹴飛ばすたび、乗り合いの幌馬車は必要以上にバウンドする。
リオは弾む馬車を楽しんでいるようだが、俺はというと、
背骨を駆け抜ける衝撃と戦いながら、途中休憩は挟むものの回復をまたずに出発を繰り返す。
〈この馬車移動だけは馴染めないな〉
と、心の中で悪態をつきながら丸1日揺られて小さな村に着いた。
石積みの壁で囲われた小さな村は、周辺の魔物が強い事のあらわれだろう。
馬車から降りてボロボロのまま村の先にある山を目指してリオと二人で登っていく、
三時間くらいハイキングを楽しんだあとで冒険者達が集まるキャンプ村の様な場所に到着した。
集まっている冒険者は〈C級〉がメインで、ソロやらパーティーやら、十数組が先客としてキャンプを張っていた。
俺はアイテムボックスが有るので、テントに荷物を置かなくても良いから、テント村の受付に名前と冒険者ギルドカードを提示して、〈もしも死んだら最後に立ち寄った場所〉のチェックを受ける。
冒険者は足取りが掴みにくく、たまに残された者が帰らない家族を探す為の唯一の手がかりとなる。
冒険者達は〈マーキング〉と呼ぶものだ。
俺とリオは別の意味の〈マーキング〉を済ませ、早速採集と狩に向かう。
〈サーチ〉を手に入れたので〈鉱物資源〉が百発百中で当たりが引ける。
〈鉄鉱石〉等の金属や〈ガーネット〉等の宝石類も希に手に入る。
〈サーチ〉スキルで赤い点滅をしている岩をツルハシで砕き、アイテムボックスに丸ごと放り込み、〈石〉〈砂〉〈岩〉を捨てていけば〈鉱物資源〉がアイテムボックスに残ていく、
採掘中はリオが周囲の警戒をしてくれているので安心して作業ができる。
そして、採掘が一段落すれば狩猟を始める。
〈サーチ〉で敵を見つけて弓で倒すのが基本なのだが、今回の遠征で〈近接武器〉の練習も兼ねている。
俺は今まで、罠で足止めして弓か〈岩雪崩れ〉が攻撃手段だったが、近くに来られた場合の応戦手段が無い事を〈スタンプボア〉の時に痛感したので、出発前にサラとガルと共に岩場で稼いだ分で〈片手剣〉と〈小型盾〉を購入してきた。
この一帯では、〈山ネズミ〉という、〈カピバラサイズのネズミ〉が沢山生息している。
小型の虫魔物を主食としている比較的温厚な魔物だが、肉や毛皮も利用価値が有り、魔石も体の割に大きめな、色んな意味で〈美味しい〉魔物である。
リオに〈山ネズミ〉を俺の方に追い込んでもらい片手剣で倒すのを繰り返す。
もちろん血抜きをしてからアイテムボックスにしまっていくが、俺のアイテムボックスはいくらでも入る。
なので、初日なのに、凄い量の〈山ネズミ〉が手に入った。
1日目はこれくらいにして、キャンプ村に帰り、〈山ネズミ〉を一匹解体して、俺とリオの晩飯を作る。
移動中は非常食と干し肉ばかりだからだ俺もリオも、〈フレッシュミート〉に心が踊っている。
リオには生肉を骨付きのままあげるのだが、〈ネズミ〉の名前からなぜか少し心配になり、念のため〈クリーン〉をかけてからリオに出した。
バリバリムシャムシャと美味しそうに食べているリオを眺めながら、俺は例のクルクル回すタイプのグリルで〈山ネズミ肉〉を焼いていく、下味をつけた肉 (リオと半分こしたのでほぼ半身)をクルクル回すのだが、焼き上がりまで小一時間かかる、
同じように魔物をハントしている、あのゲームの様に音楽が流れてあっという間焼き上がれば楽なのになぁ…
とボヤキながら焼き続ける。
焼き上がる頃には〈例の音楽〉を百回以上鼻歌で歌っていただろう。
あまりに時間が掛かったので、俺が晩飯を食べる時にはリオの小腹が空いたのか、
〈いいなぁー〉みたいに見つめてくるので味が薄そうな中の部分を少し切り分けて、二人で食べ始めた。
表面はカリっと仕上がり、程よい油がのった肉は、噛めば噛むほど味が出てくる何とも美味しい肉だった。
地球でネズミを食べた事は無いので、違いは解らないが、大自然の中で、悪い物は食べて無いため、臭み等は余り感じない、〈動物的〉な野性味はあるが、嫌な感じではない、少々クセが気になれば、ハーブで何とでも出来る程度だ。
〈クリーン〉を身に付けたので、マヨネーズを作れる様になり食生活の面でかなり進歩した。
流石に旨い肉とはいえ、ずっと同じ味が続くのは辛いので、野菜とマヨネーズを追加してパンに挟んでみたりした。
スモークチキンサンドの様な味で美味でした。
食べきれない分はアイテムボックスにしまいテントで休む事にする。
あぁ、勿論〈上手に焼けてました。〉
翌朝、少し食べ過ぎて軽い胸焼けを起こして目が覚めた。
リオも食いすぎたのか、
朝飯代わりのジャーキーに手をつけず、
〈ご主人、狩に行きましょう!〉
と早く消化を促したい様子、
俺も同じ意見なので、朝早くから2日目の狩をスタートさせた。
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