第2話 謎の女と自分の価値

「……で、お前は一体何者なんだ?」


 俺と謎の女は別の街に来ていた。


 正直、未だに女の子とは信用できなかったが、かといって、他に宛があるわけでもない。


 女曰く、そこまで故郷までは距離があるわけではないらしい。まったく……移動魔法でも使える奴がいれば、一瞬でそこまで行けるというのに。


「ん? あ~……まぁ、名乗るほどの者じゃないっていうか……」


「そういうことを聞いているんじゃない。お前は一体どういう身分の人間なんだ、って聞いているんだ」


 俺がそう言うと女はつまらなそうな表情をする。


「……まぁ、シーフみたいな感じかな? 立場としては」


「シーフがパーティにも所属せずに一人で彷徨いているっていうのは、かなり珍しいな」


 俺がそう言うと、シーフは少し悲しそうに視線を落とす。


「いや、まぁ、私もパーティで色々あってね……」


「……なるほど。追放されたってわけか」


 俺がそう言うとシーフは肯定するわけでも否定するわけでもなく黙ったままだった。


「で、暇だから、俺を故郷まで案内してくれるってわけか」


「あ、あはは……。まぁ、そんな感じかな……」


「……別に俺に良くしても何もないぞ。況してや、俺が所属するパーティにも入れないからな」


「え……。だ、駄目なの? っていうか、アンタの入ってるパーティって……ヤバいんじゃないの?」


 シーフが少し引きつったような顔で俺に向かってそう言う。


「……まぁ、ヤバいな。リーダーの勇者はわがままで横暴だし……魔法使いの女は勇者のカキタレで、アイツを全肯定するだけの存在……で、戦士の俺は荷物持ち兼敵からの攻撃の壁役って感じだな」


「……それで、ヒーラーのあの子は……完全にお荷物だったってわけ?」


 シーフが少し苛ついたようにそう言う。


「……まぁ、そうなるな。俺は別にあいつのことそこまで鈍感だと思ったことはない。普通だ。回復魔法も普通に使えてたし……まぁ、その普通だと思っていた回復魔法が普通じゃなかったんだけどな」


「それは……どういうこと?」


「……強化回復魔法だったんだよ。超レアスキルのな。戦闘で受けた傷を治すだけじゃなくて、さらに、回復した対象を強化する……通りでいつも敵の攻撃を防いでいる俺が回復するたびに防御力があがっていったわけだな」


 ……考えてみれば、俺もそれに気付かなかったのも相当マヌケだな。


 まぁ、俺の場合は勇者の言うことに従うだけだったし、勇者自身も、後々ギルドに確認してみてわかったことなのだが。


「……へぇ。それで、アンタが探し役として……勇者と魔法使いは今頃お楽しみってわけ?」「さぁな……。俺にはどうでもいいことだ」


 シーフはなぜか怒ったように俺のことを見ている。


「……ねぇ。アンタ、それでいいの? そんなパーティに戻る必要、ある?」


 シーフにそう聞かれて俺は少し考え込んだあとで返答する。


「……あんな勇者でも一応、俺を拾ってくれたんだ。俺は体がデカいだけで特技があるわけじゃない。仕方ないんだ」


「そんなの……おかしい」


 シーフはそう言って、黙ってしまった。俺としてもそれ以上はシーフに話しかけなかった。


 仮にヒーラーを見つけたとして……あいつはパーティに戻るだろうか?


 俺にはどうしても、そうは思えないのであった。

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