第87話 文化祭始まったよ
―――文化祭当日。文化祭も始まり、既に喫茶店はオープンしている。そして接客だが……陽葵の手際のいい立ち振る舞いに、皆、唖然としている。
「陽葵の家、喫茶店ですから」
その情報に、皆、驚いた。
「え? そうだったの? 俺今度行ってみようかな?」
「止めた方が良いですよ。客層、みんな渋すぎて、私の彼氏の正吾君、一人で行って『俺、小僧以下だった』って肩落としてました」
「あの結構渋めの御前君がそう言うって……マジか……」
「私も一度行きましたが……皆『お嬢ちゃん』扱いで、レディーとして扱ってくれる人はマスターだけでした」
「葉倉さんですらそうなのか……やめよ」
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しかし、浅原君だけど、真面目に率先して動いている。動いているが、接客の相手は可愛い子だけだ。個性的な女の子は取り巻きの子達が他のスタッフにやらせる感じで指示を出している。
なんか他の男子がブツブツ言い始めているが、その文句は浅原君に言ってるのではなく、取り巻きの子達に言っている。
「浅原君の下心が
「陽葵もですか……彼、男子の矛先彼女らに向くように仕向けてますね」
「だってあいつ私と会話する時、絶対おっぱい見るんだよ。完全に私とヤリ目で付き合おうとしてるの見え見えでバレバレなんだけど」
「いいじゃ無いですか! 私なんて見てもらえる程おっぱい無いんですから! 正吾君は『小さい方が好き』って言ってくれるからいんですけど……モジモジ……ポ♡」
「はいはい。変な惚気方しないで」
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午前中の休憩で正吾君のクラスに顔を出して来たら……去年のお化け屋敷と違ってメチャクチャ怖かった。何あのクオリティー……生々し過ぎるでしょ! 今夜、正吾君と一緒に寝よ……。
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———時間はお昼を過ぎ……結構経っている。
うちのクラスの喫茶店はお客さんが列を作りこそはしなかったが、店には途絶える事なく人が入って来ていた。
この時間、ちょっと空席もある位で私達も行動に余裕があった。そして……、
「———丹菜、来たぞ」
「いらっしゃ……正吾君♡ ……と、何であんたが一緒にいるの! 浅原波奈々!」
正吾君が来た♡ って思ったら後ろに浅原波奈々が立っていた。
「やっほー♪ 葉倉さんこんにちは。だって私、正吾君と同じクラスだし、席隣だし、今回同じ制作グループだし、今、同じタイミングで休憩になったし、私は兄の大河に会いに来たら偶々正吾君と行動が一緒になっただけだから……なんか『一緒にいるな』っていう方が難しいくらい色々被っちゃってるね? 正吾君♪」
「———丹菜、空いてる席いいか?」
「はい♪ そこ空いてますよ」
正吾君は浅原妹は無視して一人席に座った。本当に偶々一緒になったの?
「それじゃあ私も♪」
「浅原さんはこちらです」
「そこって床ですよね? 酷い店員さんだなー。正吾君この店員さん酷くないですか?」
「俺から離れれば優しくなるぞ」
「ははは……葉倉さん、あんまり妹を虐めないでくれよ。これでも俺にとっては可愛い妹なんだから……ほら、ここに座りな」
浅原兄が正吾君と同じ席の椅子を引いて座るように促している。
「浅原さん、何で正吾君と同じ席案内してるんですか!」
「え? 兄として妹の恋路は応援するものかと……」
「いいんですか? 妹さん、このまま行くと100%失恋しますよ」
「それはそれで経験さ。でも御前君、妹泣かせないでね」
「ナポリタンとオレンジジュース……いいか?」
正吾君、浅原兄弟どころか私も無視していつの間にか席の側に立ってた陽葵に注文していた。
「ご注文繰り返します。ナポリタン一つとオレンジジュース一つですね? 少々お待ちください」
「正吾君、私まで無視しましたね?」
「ん? 楽しそうにコントしてるから邪魔しちゃならんと思ってな」
「コントじゃありませんよ!」
「他のお客さんに迷惑だから今は我慢しろ。後で沢山甘えさせてやっから」
「はい♡ それなら仕方ないです♡」
今はそれで手を打つことにした。ま、浅原妹が正吾君に何しようと私から奪う事は出来ませんから、エッチなこと以外、何しても別に良いんですけどね。
今回の文化祭は流石に正吾君と同じ時間に休憩を取る事は出来なかった。一緒に回る事は出来なかったけど、今回はお化け屋敷に一緒に入ったしそれなりに楽しく初日は無事に終了した。
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———今、正吾君の部屋。私は正吾君の膝の上に横抱っこして座っている。幸せだ♡ 明日も浅原妹が邪魔してくれればこうして甘えさせて……邪魔しなくても甘えられるんだよね。そう考えると、彼女、ただ邪魔なだけだった。
それと今日のお化け屋敷が怖かったから今夜はお風呂もベッドも一緒だ♡ でもエッチは無しね。
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