第80話 校外学習

 ———二学期も始まり既に数日が経った.。

 浅原兄はモテモテだが一週間もすると他のクラスから浅原兄を見に来る人はいなくなった。ただ、クラス内では未だに騒がれていて、休み時間になると彼の周りには常に誰かがいる。なので、陽葵は休み時間の度に、私の所に避難してくる。

 ただ、ちょっとでも時間があると、浅原兄は陽葵と私に話し掛けてくる。単に、お友達になろうっていう純粋な気持ちならいいんだけど、下心が凄くビンビンに伝わってくる。陽葵は席が隣という事もあって、何かと話し掛けられている状況だ。


 ―――昼休み。初日以来、浅原兄妹は部室でお昼ご飯は食べていない。

 兄は女の子に捕まって教室で一緒にお弁当を食べているようだ。ついでに妹の方も正吾君の話だとクラスの子に捕まって教室でお弁当を食べているらしい。


「放課後の部活はどうよ?」


「それなりだな。彼ら上手いよ。ただ、俺らは結局リズム楽器だからな……お前らが入ったら……分からん」


「ところで、正吾の方はどうなんだ?」


「何がだ?」


「浅原妹だよ。噂じゃいつも一緒にいるらしいじゃないか」


「それ、私も耳にしてます。正吾君は部屋でも何も言いませんが……もしかして私に隠し事ですか?」


「え? 浅原妹がいつも一緒にいるって? そうなのか? クラスの奴にも言われたが……まぁ席が隣だしな。気にしたこと無かったな」


「ふふ……そんな事だろうと思ってました。浅原さんにはちょっとヤキモチ焼いちゃいますが、自分でこんな事言うのもなんですが、正吾君、私しか見えてませんからね。もし彼女が正吾君に気が合って近づいているのであれば、逆に彼女が不憫に見えてきてちょっと可愛そうな感じです。正吾君、もう少し浅原さんに気付いて上げて下さい」


「丹菜、随分余裕だね」


「だって、婚約者ですし……正吾君浮気出来るような人じゃありませんから……したらタダじゃ済みませんけどね……フフフ」


「丹菜、怖いって!」


「陽葵こそ、いつも浅原兄が隣にいますが……気付いてました?」


「え? そうなの? そう言えば最近日直の時、プリント運ぶの手伝って貰ったような気が……違う人だったかな?」


 陽葵って何か作業をしていると周りの人が勝手に手伝ったりしてくれる。陽葵にとっては浅原兄も有象無象の一人のようだ。


 大地君も浅原兄と陽葵の事は知ってるようだ。


「ま、俺もたまに陽葵の噂耳にするけど……陽葵の方は気にしてないんだけど、浅原大河の性格がちょっとな……最近部活で一緒に居るけど、結構自信過剰だな。『自分がルール』みたいなところがあるな」


 大地君の言葉に空君も同意している。


「それは俺も感じてる。練習しててもあいつの思うとおりな方向に物事を持って行こうとするな」


 なんか陽葵に危険が迫っている気がするんですけど……大丈夫かな?


 ・

 ・

 ・


 ―――そして、課外授業の班を決める時が来た。

 課外授業の内容はこの辺では秋の定番「芋煮会」である。この時期になると、テレビなんかでは毎年、私が住む県と隣の県で、芋煮の作り方で言い合いをケンカするのが定番となっている。

 私の住む県は、味噌が名産になっている事もあって、芋煮には味噌を使う。そして肉は豚肉だ。隣の県は醤油をベースに肉は牛肉。勿論芋は「里芋」を使う。通常、河川敷とか所定の公園とか野外で作って食べる、言わば、BBQの鍋版みたいなもんだ。

 味噌と醤油、そして入れる具材の拘りはこの二県しかなく、周辺の県では「里芋」が入った鍋であれば何でもOKだったり、「芋煮会」のやり方そのものが全く違ったり様々だ。


 我が校では、毎年二年生がこの課外授業を行っている。一年生はどっかの工場見学と遊園地という小学生並みの内容だった。三年生は一学期に修学旅行だ。


 班編成は、一班八人で一クラス五班になる。班はくじ引きで決めた。そしてクラス内の交流を目的としているので、班員のトレードは禁止になってる。


「陽葵……残念です。別の班になってしまいました。」


「こればっかりはしょうが無いよ」


 すると隣から……


「希乃さんと同じ班によ。宜しくね」


 浅原大河である。


「あー、うん、宜しくね」


 陽葵は相変わらず素っ気ない。


 ・

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 ・


 ———夜、正吾君から一言報告が……。


「浅原妹と同じ班になった」

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