全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。

第78話 全員集合

　―――LHRの時間だ。と言っても特に何があるわけでもなく、殆ど二学期の予定だけ伝えて終わった。

　二学期の大きなイベントは校外学習と文化祭だ。それと役員選挙もあるが私には関係のない話だ。

　LHRが終わると、今日は正吾君から迎えにきた。うちのクラスより少し早く終わったようだね。そして正吾君の後ろには浅原妹がいた。

「あ、この前の。ヤッホー♪」

　浅原妹は正吾君の後ろから覗き込んで私に向かって手を振った。何であんた正吾君と一緒に歩いてんの！

　私はカバンを手に取り勢いよく廊下に出た。そして正吾君の腕を取って、彼女に話し声が聞こえない距離に移動して正吾君に問いただした。

「何で彼女正吾君くっついてんですか？　なんか正吾君の事知ってるみたいですけど、髪下ろした姿見せた事無いはずですよね？」

「声でバレた」

「声？　そう言えば地下で会った時、私、声で気付かれました。彼女怖いですね」

　いつも私は正吾君と手を繋いで（恋人繋ぎで）歩くんだけど、何だか浅原妹に正吾君が取られる気がして、今日は腕を組んで歩いた。

　大地君も陽葵を迎えに来たようだ。後ろの出入り口で待つ大地君に陽葵は抱きついて頬擦りしている。今日はメークしてるんです。ファンデ服に着いちゃいますよ。

　そして浅原兄も後ろの出入り口から抱きついてる陽葵達二人を横目に浅原妹の元へ来た。

　浅原兄は私と正吾君の様子を見て「何でこの二人が腕組みしてるんだ？」って顔で見ている。その様子に気付いた浅原妹が兄に耳打ちした。

「———！　そうなの？」

　どうやらトゥエルブである事を教えたらしい。驚いた様子で正吾君を見ている。

「二人、付き合ってんだ？」

「はい♪」

　私は兄の質問に屈託のない笑顔で答えた。浅原妹への牽制だ。

　陽葵達も来て三組で廊下を歩く事になった。

　浅原兄弟は私達の後ろを歩いてるんだけど、すれ違う人は勿論、前を歩く人も後ろをチラチラ振り向きながら歩いている。兎に角二人は凄く注目を浴びている。

　昇降口で空君達と合流した。空君達は私達の後ろにいる兄弟に気付いた……気付く以前に目立ってるから「目が行った」が正しいね。

　浅原兄は空君に気付くと気軽な感じで声を掛けた。空君も気軽な感じで受け答えする。

「あ、先日はどうも」

「どうも。浅原君だっけ？　君の事はこっちのクラスでも話題になってたよ」

　愛花ちゃんも話に乗る。

「イケメンですからね」

「それはあんまり言わないで欲しいかな…… ﾊﾊ」

　ここで珍しく陽葵が口を開く。

「それじゃあ私達はこれで」

　陽葵は早くこの場を去りたいようだ。ただ、浅原妹がそれを引き留めた。

「あ、ちょっと待って、折角だから皆で一緒に帰ろうよ」

　私は正吾君の顔を見ると「仕方ない」って顔をしていた。どうせ、駅まで皆同じ方向だもんね。一緒に帰らなくても一緒に同じ所に向かっちゃうんだ。

　結局、ハイスペックスのメンバーと浅原兄弟で帰る事になったんだけど……なんで浅原妹、私の正吾君の隣を歩く？

　私の右には正吾君が私と腕を組んで歩いている。正吾君の右には浅原妹、更にその右隣に浅原兄が並ぶ。

　歩き始めて間もなく浅原妹が皆に向けて質問してきた。

「皆さんお付き合いされてるんですね？」

　パッと見れば一目瞭然である。陽葵は大地君にしがみついてるし、愛花ちゃんは空君の袖を掴んでる。私と正吾君はいつもと同じ（恋人繋ぎ）だ。

「はい、見たまんまですね。一応学校内じゃ私達有名人になっちゃってます」

　私はどうしても愛想良く対応してしまう。なんでだろ？　浅原妹は私の答えに、

「へぇー、そうなんだ。でも教室でビックリしたよ。席に座って挨拶したら、声があの人だったから。御前君、皆と逆の隠し方してるんだもん」

「ですよね。私も最初はビックリしました」

　しかし、彼女の耳って凄いな。声で分かる？　でも正吾君の声は低くて渋いから分かりやすいかな？　私も声で分かられたし……私も特徴あるのかな？

　浅原兄から困った質問が来た。

「クラスの女の子から聞いたんだけど、軽音部有るんだって？」

　その言葉に全員立ち止まり、全員浅原兄を見た。

　浅原兄は一瞬たじろいだ。妹は兄と私達を交互に見ている。

　空君が浅原兄弟に確認した。

「……軽音部に入りたいのか？」

「出来れば入りたいね。あっちで組んでたバンド、この前のライブを最後に俺と波奈々脱退したし、今、僕らフリーなんでね」

「なら、明日の昼休み、軽音部の部室に来てくれるか？」

　空君は二人を軽音部の部室へ招待した。