第46話 キス

 ———正吾君の部屋にいる。


 二日ぶりの正吾君の部屋だ。そして、正吾君のベッドだ。


 私は彼の部屋に入り真っ先のベッドに潜り込んだ。潜り込んだが何かが足りない。正吾成分が充分身体に浸透してこない感じがした。多分、私の中の正吾成分が空っぽになってしまったんだ。

 このまま潜ってても充電はいつまで経っても終わらない———。


 ———なので私は全裸になった。


 全裸で正吾君のベッドに潜り込んだ。

 凄い♡ 肌という肌から正吾成分が吸収されていく。


 ・

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 私は十分もしないうちに何度も———ふぅ♡ 

 私だって普通の健全な女子高生だ。やることやるしやってみたいし、彼氏の布団の中で毎日モゾモゾしたっていいじゃない。彼氏になる前から毎日モゾモゾしてたけどさ。


 開き直ったところで、正吾君から「帰る」のいつものメッセージが届いた。


 それではお夕飯を作り始めます。


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 ”———ガチャ”

「ただいま」


「おかえりなさい♪ 早くお風呂とご飯と私にしましょう♡」


「おいおい、せっかちが過ぎるぞ。それに丹菜はまだ頂かないよ」


「そうなんですか? 残念です」


「まずはご飯お願い」


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「ご馳走様でした」


「お粗末さまです」


「やっぱり美味しいな。学食のおばちゃんに悪いが正直、丹菜の料理の方が素直に美味いって思ったよ」


「ふふふ。ありがとう御座います」


 すると正吾君は突然コタツから出てコタツの隣に正座した。

 その行動に私も釣られてコタツの隣に正座した。


 正吾君は何か改まった感じで話し始めた。


「それでな、丹菜の告白の返事、ちゃんと言ってなかったから今言うけどいいか?」


「はい」


 そうなんだよね。私、正吾君の返事聞く前に廊下に連れ出してしまったんだ。一応『スキスキ』って事は聞いたけど。


 正吾君は私にゆっくり語りかけた。


「俺も丹菜の事が大好きです。これからも一緒にいて下さい」


「はい♡」


 そう返事をして私は正吾君に飛びついて彼の首に抱気ついた。彼も私を全身で支えてくれた。

 そして私は正吾君の膝の上に跨り、彼の顔を両手で押さえて、唇と唇を思いっきりくっつけた。

「キス」なんだけど、そんな上品な行為じゃ無い。完全に私の唇が正吾君の唇をレイプしている。舌も入れた。正吾君も私の体を両腕でホールドして私の唇を貪っている。


 どのくらいの時間キスしていたんだろう?


 ちょっと落ち着いたので最後に「チュッ」っとして私は正吾君の膝の上から離れた。


「食器洗わないとな」


 正吾君はそう言って立ちあがろうとした瞬間、コケた。


「いてっ」


 正座している脚の上に私がまたがって座ったので脚が痺れたようだ。


「大丈夫ですか?」


「———大丈夫。足痺れた」


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 ———就寝時間になった。


 食器を片付けて、私は一度部屋に戻って一通りの事をしてまた正吾君の部屋に戻ってきたんだけど、正吾君の部屋ではベタベタイチャイチチュッチュチュッチュしてばかりいた。私があげたチョコは私が手を使って口を使って食べさせて上げた。口の周りについたチョコは私が口で拭き取って上げた。


「今日一緒に寝ちゃだめですか?」


「だーめ。明日も学校だし、今夜一緒に寝たら朝まで寝ないと思う。だからダメだ」


「———寝なくていいのに……」


「俺の毛布やるからこれで我慢しろ」


「しょうがないです。これで我慢します」


「私の毛布要りませんか?」


「———大丈夫だ。俺がいない間にベッドに入ってるんだろ? 毎晩丹菜の匂いするからそれで十分だ」


「(———バレてたー! 恥ずかしい!)」


 自分でも分かる程顔が真っ赤だ。熱い!

 もしかして、しちゃってる事も気付いてる? 大丈夫。痕跡は残していない筈。でも、正吾君だからバレてもいいや。


「それじゃあ、おやすみ———チュッ」


「おやすみなさい。正くん」


「———ん? ちょっと待て。今なんて言った?」


しょうくんって……だめですか?」


「———いや、ダメじゃ無い……ダメじゃ無いけど……学校ではやめてくれよ」


 あれ? なんか……顔が赤い? ふふーん……ここはちょっと意地悪するか……へっへっへ。


「それじゃあ、改めておやすみなさい。チュッ」


 ・

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 ・


 ———翌日。


「チュッ…クチュ…チュパ……」


「……おはよ」


「おはようござます」


 今日は声を掛けずにキスで起こした。


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 ・

 ・


 私は正くんと手を繋いで登校している。堂々と手を繋げるって最高だね。電車の中でも気兼ねなく密着出来る。電車の中じゃなくても密着出来る。


 駅から出て学校に着くまでの間、いつもなら女の子が数人寄って来てたけど、今日は正くんと手を繋いで歩いているから誰も寄ってこない。


 教室に入る時も今日から正くんと一緒だ。


「陽葵おっはーよー♪」


「おはよう丹菜。今日はいつもと違って挨拶が弾んでるね」


「だって正くんと手、繋いで来たからね」


「正くん?」


「おい、やめろ!」


「正吾君顔赤いよ」


「丹菜、それは学校では言わない約束だろ?」


「え? 私約束してないですよ? ちょっと戻って読み返してみて下さい。『分かった』って書いてませんから」


「そう来たか……分かった。それじゃあ、俺は『葉倉さん』って呼んでやる」


「ごめんなさい。『丹菜』でお願いします」


「わかればよろしい」


「それじゃあ、『正吾』でいいですか?」


「それならいい」


 ふと陽葵に目をやると、陽葵が呆れてる。


「———家でやれ」


 周りの人たちも呆気に取られてた。


「葉倉さん……めっちゃ可愛いじゃん」

「昨日の御前への告白は夢じゃなかったのか……ガックシ」

「御前後でボコろうと思ったけど、あんな葉倉さん見たらそんな気も失せるよ」

「葉倉さん、ホントに正吾のこと好きなんだな」

「正吾君あんなに面白い人だったの?」 

「爆ぜろ!このリア充がッ!」


「皆さん、正吾取っちゃダメですよ。いじめてもダメです」


「「「はいはい」」」


 結局この後私の彼の呼び方は『正吾君』に戻っちゃった。

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