ある日の放課後、科学研究部に所属する『俺』と先輩である不知火遥は部室で他愛ない会話を繰り広げていた。しかし、遥に命じられて『俺』がジュースを買いに行こうとしたところで、部室のドアが開かないことに気づく。開かないドアをどうにかしようと悪戦苦闘するが、そのとき『俺』は窓の向こうに飛び降りる女性の姿を目撃してしまう。さらにその直後意識が暗転し、気が付くと時計の針と15分前に戻っていた!
絶対に出られない部屋、この場にいるはずのない飛び降りる女性、そしてタイムリープ。これらのありえない出来事に対して、科学研究部の二人は科学的アプローチ、すなわち仮説と検証を武器にして、問題を一つ一つ切り分けて事態の真相と部室から脱出する手段を探っていく。
物語はタイムリープを繰り返す部室の中だけで展開され、登場人物も『俺』と先輩のみ。非常にミニマルな内容だが、この二人がときどきイチャつきを交えつつ、徐々に真実に迫っていく様子が大変面白い!
検証が進むたびに真実が少しずつ明かされていくストーリーはワクワクするし、実験と称してキスマークをつけたり、ハグをねだったりする遥先輩はとても愛らしい。SFミステリーとして読んでもラブコメとして読んでも楽しめる作品だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)