見たい景色

ミンイチ

第1話

 今の私のパソコンには太陽系が映っている。


 ただし、このパソコンに映っているものは本物ではなく、あるシミュレータで再現しているものだ。


 しかも、ネット上に公開されているデータではなく、自分で一から作り上げたものであり、これを作り上げるのに使用したのは少しだけ古いシミュレータだ。


 これを作り上げるにはかなりの時間がかかったが、2010年代頃の地球を再現することが出来た。


 私がこれを作り上げたのには、僕にとっては大きな、しかし周りの人からしたらとても小さな目標があったからだ。


 それは、ある生物が作り出す風景を見るためだ。


 私はある機器を頭につけ、そのシミュレータ内にある地球の小川に仮想の体を作り上げて、その生物が動き出す時間まで周りを散策する。


 今の人間の生存圏では感じることのできない風や土の匂い、そしてとても冷たく、しかし一種の気持ちよさを感じる小川の水の冷たさ。


 これらの感覚は、現実では体験することはできないが、この世界ではいくらでも感じることができる。


 感じたことのない感覚を堪能していると、目的の生物が動き出す時間になっていた。


 目的の場所はとてもきれいな小川、時期は夏のはじめ、そして風は弱く、月の明かりがあまりない夜8時頃。


  私は今夜、今では環境の変化で見ることができなくなった風景である、蛍が作り出すとても美しい風景を見た。

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