第115話.ホーレンソーです!
あのぉ、長老さん? この異世界ではまず聞く事の無い “れでぃー” という言葉、一体何処で覚えたのでしょうか?
まさか、情報源は……ワタシのママ?
って事は長老さん、崇拝するだけでは無く本当に嘗てピント団の代表としてママと会った事が有るんでしょうか?
「たぶん、そなたもあの日の『妖精王』との面会について、報告したい事が有るんじゃろ? そなたの顔に書いて在るからの」
再びワタシの前に戻って来た長老さん、ニコッと笑いました。
「しかし部外者の人間が居ると、色々聞かれちゃマズイ事も有ろうての。あの旅人から離れる為、席を移ったんじゃ……」
流石は長老さん、細やかな気配りです! 巨大商人ギルドを統率する “長” として、プライバシー保護対策は……
いえ、それだけでは無さそうな気が。たぶん、ワタシ……試されてますね。
「えぇと、長老さんに報告したい事が2つ程御座いまして」
用心に越した事は在りません。ワタシはススッと長老さんに摺り寄り、耳許で小声でヒソヒソと話します。
「まずひとつ目……『妖精王』レイラ様の “お姿” を間近で拝見して、どうして『ピント団』構想を立ち上げたのかすぐ理解出来ました」
まぁ、組織の運営方針は大体上から順番にトップダウンされて行く訳ですし……だからこそ、ピント団全体に『きぐるみ第1主義』が浸透してるんでしょうね。
キュルムの町がきぐるみを着てる人で溢れてるのも、たぶん此れが原因かと思われます。
それにワタシは長老さんの意図にすぐ気付き、自分の方から “レイラ” の名前を名乗りました。要は、このひと言でレイラ様と『良好』な関係を築けた事を暗に言葉に含める事が出来た訳です。
何でこんな回りくどい事をしたのか、ですって? すぐ隣の部屋に部外者の人間がいる中での “密談トーク” だから、慎重を期したんです。
もしかして、レイラ様って親しい間柄になった人間にしか自分の本当の名前を明かさ無いんでしょうか……? レイラ様、ママとは『旧知の仲』と言ってましたから。
恐らく、今のやり取りで長老さんの一番知りたかった点は其処でしょう。
でも……レイラ様に関しては、秘密のままにしておいた方が良い部分も有ります。
このキュルムの町の人達にとって、守り神である『妖精王』というモノに対する “神秘性” が失われる様な発言は極力避けた方が良いのでは無いかと思うんです。
それ位、この人達にとって『妖精王』とは崇高なんです。
話口調からして、『妖精王』とは容姿端麗、知識豊富な賢者みたいな “男性” だって認識してる雰囲気です。だから、実は『妖精王』は見た目がか弱い “少女” でした……なんて、口が避けても言えません。
もし、噂として異世界中を駆け巡ったりなんかすれば……巨大商人ギルドであるピント団崩壊のきっかけを作り、この異世界の勢力地図をメチャクチャにしてしまう様な気が。
【妖精
横でニックが、羽根をバサバサ振って囃し立てます。レイラの正体を知りつつ、それを隠しながら囃し立てる器用さ……いつもは飄々としてるニックですが、実はスゴいお利口さん?
ヨシ、この秘密はワタシの中で封印してしまいましょう。そして、ふたつ目は……
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