第097話.烈風龍を華麗に倒す

 頭部の位置、大きさを確認してからワタシは巨大な尻尾をスゥと触り、それに頭ポンポン♡を当ててありったけの神気を流し込んでから駈け登ります。神気で “しなり” を作る為です!


 そして尻尾の付け根で、頭ポンポン♡で生まれたしなりの反動を利用して大ジャンプします。最後に、その先にあるニックの頭を踏み台にして2段ジャンプをしたんです!


 しかし、当初はニックを踏み台にして入口の踊り場まで一気に跳ぶ予定だったのに……2段ジャンプをしても、風で押し戻されて烈風龍の頭部までしか届きません。


 でも頭部なら無条件で、直に烈風龍にダメージを与えられます!


「さぁ、この頭ポンポン♡で……」


 ワタシは烈風龍の頭部に着地して、ある驚愕の事実に気付きます。烈風龍は巨躯なので、頭部が大き過ぎて頭ポンポン♡で破壊する事自体無理だったんです!


「頭部を破壊する事は無理ですか……なら、他の作戦を試すまでです。自分の閃きを信じます!」


 でも残り時間は僅か、幾つもは試せません。だからワタシは、咄嗟とっさに頭に浮かんだ作戦を試してみる事にしたんです。


「脳を揺らして、戦闘不能に出来るかどうか試してみますか!」


 ワタシが両手のひらに神気を溜め始めた、正にその時……何と烈風龍がガパッと口を開いたまま魔力を溜め、中空にいるニックに向けて何かを吐き出そうとしたんです!


 このままでは何か、ヤバい事だけは分かります! ワタシは急いで神気を纏わせた両手をお互い少し離れた状態で烈風龍の頭部に置き、置いた其々の手に角度を付けて……


「コレならどうですっ! ダブル……頭ポンポン♡!!!」


 ワタシ、この発勁技をお互い角度を付けて放つ事で烈風龍の脳をシェイクして見せたんです!


 ダブルの頭ポンポン♡の振動のお陰で、烈風龍が吐き出したモノはニックでは無く別の方向へ飛んで行ったみたいです。


「あ、頭ポンポン♡が通用しました……!」


 脳をシェイクされた烈風龍、薄れゆく意識の中で激戦を制したワタシに賛辞の言葉を送ります。



【流石は我が主が見込んだ “選ばれし者” 達、見事であったぞ……】



 ワタシはキュイアームを腕まくりして、ふんっと胸を張ってこう言ったんです。


「だってワタシ、地獄を見てひと回り大きくなった『日本一アキラメの悪い女神』ですからねっ! これ位の試練、屁でもありませんっ!」


 ワタシのそのひと言を聞いて安心したのか、失神して落ちて行く烈風龍……


 ワタシは烈風龍が落ちる前に、急いで烈風龍の頭部から入り口に繋がる踊り場に向かって大ジャンプしました。


 その時大ジャンプの空中で、眼下にとんでもない光景を目の当たりにしてしまうんです!











 大きな音を立て崩落する桟橋と、烈風龍と共に奈落へ落ちてくニック。どうやら全ての火の玉が消えてしまったみたいなんです。タイムアップでした。


 ワタシはニックの身を呈した2段ジャンプと烈風龍の頭部のお陰で、何とか入口に繋がる踊り場に手を掛ける事が出来ました。


 宙ぶらりんの状態で、ワタシは何度も叫び続けたんです!


「ニックさーん! ニックさーん! コレでお別れって事無いですよねぇっ? だから返事して下さいっ! ニックさぁーん!」




 さぁ、ニックにこのワタシの魂の叫び、届くのでしょうか……?

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