第030話.バレちゃってます♡

 ちょっと、初心者の朱璃が闘うには余りにレベルの開きが有り過ぎない? 此れじゃあ、為す術も無く殺されるのがオチじゃない!


 もう「あの事」を、娘に隠してる場合じゃ無いわ! アレを使って、ガーゴイルを“瞬殺”しちゃわないとね!



バタバタバタ……バタバタバタ……



 ニックったらアーアーウーウーと喚きながら、右往左往してるし!


「ママ、あのガーゴイルってどうやって倒せば良いの?」


「あのガーゴイルにはね、打撃も魔法もダメなの! でも、闘い方はあるハズよ! だから、朱璃は私が守ってあげるわ! 溜めからの『』で……」


 そう、この難敵には溜め攻げ…… 言葉の途中だったけど、朱璃はスッと腕を横に差し出して、私の行く手を遮ったの。


「ママはそこで見てて! ママ、足を患ってるんでしょ? 足を狙われたら、一溜まりもありませんからね! ワタシが何とかします!」


 いきなり口から衝いて出た、娘のひと言に……私もビックリしたわ!


「でも朱璃、アナタだって闘うどころか親に手を上げた事すら無いじゃない? 一体どうやって」


 そこまで言った所で、私はアタフタしてバタバタしてるニックと頭同士ぶつかってしまったの。



ごいん……っ!



 両者ナルト目、ダブルノックダウンでぶっ倒れてる横を流れる様にすり抜けて……朱璃は身を屈めながら、ガーゴイルの足元に接近したの。


 しかもその時、同時に砂を一握り掴みながら。











 前に一度、家の中で喰らってて良かったわ。頭突きが来る前触れと心構えが有るから、今度はちゃんと気を失わずに見てられるもの。


 やはり朱璃とガーゴイルが対峙すると、ワタシの瞳にはガーゴイルが先程見てた時より数倍大きく映るわね。


「お……大きいですね……いえいえ、気後れしてはダメっ、ワタシ!」


 取り合えず、ガーゴイルの一撃目を避ける事さえ出来れば……その場の緊張感は解けるハズよ!


 ガーゴイルが、フクロウみたいに首だけ朱璃の方に向けたの。



ギギッ……!



 ガーゴイルと目と目が合う、まさにそのタイミングで。朱璃は握っていた砂を、思い切り下からガーゴイルの目にぶつけたのよ!


「コレでどうです?」


 超至近距離からの目潰しをまともに喰らい暴れてるガーゴイル、一撃目の地面パンチを避ける事に成功したわ!


 それに気を良くしたのか、朱璃はその流れでガーゴイルの首を上手く手繰たぐったの。


「ミルキーウェイ?……ウェーブスウィンガー? 正式名称はどちらか忘れましたけど……」


 そして、朱璃は回転空中ブランコみたいにガーゴイルの背後に回ったの。ガーゴイルが振り向いた時はもう既に、朱璃は空中から襲いかかって居たのよ!


「先制攻撃は頂きです、『でこピタ♡』!」


 朱璃は、神気で頭部をコーティングした状態でゴブリンに頭突き、『でこピタ♡』を思い切り喰らわせたの!



ガイィィィ……ン!


ギギ?



「痛っつつっ……まるで効いて無いじゃないですかっ!」




 私が気を失ってると思い込んでるから朱璃、伸び伸びと闘えてるの。


 でも、本当はね……

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