第018話.一点モノのきぐるみ

 何の苦も無くスイスイと、一発でピンクゴールドの“帯”と意識とを連結出来た理由。それは「舞う」という行為が……舞いを通して神様にココロを差し出す行為と同義だから。


 奇しくもニックの要求する行為が、日頃ピンクゴールドの帯を自由に扱える様に練習してた動作そのものだったからなんです!




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 うわ、さすが……お姉ちゃんもキョウコ様讓り、いやそれよりも更に格上のモノを持ってる様に感じられるんだよねー。


 って云うかそれ・・さ、使えるんだったら最初から言ってよー!



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 ニックはワタシの意識に眠る、まだ見ぬ潜在能力の高さに舌を巻いてるみたいですね。


 ワタシのココロと結び付いた帯が、アタッシュケースを外部からゆっくりジワジワと浸透して行って……


 その中に入っている“モノ”に、直接触れる事が出来たみたいです。



「んっ、何かに触れた“感触”ありましたよ?」


カツン……!



 ピンクゴールドの帯がアタッシュケースの中身と触れた途端、アタッシュケースの留め金が外れた音がしました。


 ワタシがニックの方を振り向くと、ニックはこちらを見てコクンと頷いてます。


 ワタシはそっと、アタッシュケースをゆっくり開けてみると……その中には、ウサギのきぐるみが入ってたんです!


「朱璃、異世界のモンスターを捕まえて仲間にする事を“テイム”って言うの」


 それを見て感慨深そうな顔で、ママはこう言葉を繋げます。


「そして、テイムして一生を添い遂げてくれたモンスターの『形見』というべきドロップアイテムから作ったきぐるみの事を“テイムぐるみ”って言うのよ」


 そう言いながらママは、元自分のきぐるみをひと撫でして。


「そのひとつで、キュイラージってテイムモンスターのドロップアイテムから作った此れこそ……私愛用の『キュイぐるみ』なのよ」


 テイムモンスターから主人への、感謝の一杯詰まった……最期の愛の贈り物。


「私は“獣縫士けもぬいし”のジョブスキルできぐるみに魂を込める事が出来るから、そのスキルを使ってもともと自分専用だったこのキュイぐるみを朱璃の仕様にリメイクしたのよ」


 きぐるみも、喜んでるみたい……ママは微笑みます。


「その上で、新たに“魂”を籠める前の状態でこのアタッシュケースに封印したの。全ては次の世代になる朱璃に託す為にね……」


 ママはキュイぐるみを娘のワタシに渡せて、とても嬉しそうです。


「そして今、朱璃は自分の“魂”をこのきぐるみに籠めたわ。これで『譲渡』は完了ね。ちゃんと朱璃の“魂”を主と認めて、最期までラブラブ♡寄り添ってくれるハズよ」











 テイムぐるみは野生モンスターから作られた廉価品である量産ぐるみとは違い、テイムモンスターの形見から作られた“一点モノ”の高級品なんだそうです。


 だから、持ち主を昇天させてでも奪い取ろうとする輩が後を絶たないんだそうです。それに対する自衛策こそ、今行った『譲渡の儀式』です。



 『譲渡』という形式を通らずに次の持ち主の手に渡ると、テイムモンスターが泣いて悲しむからか、きぐるみの性能が著しく損なわれるんだそうで……




 果たして、キュイぐるみの性能とは如何程のものなんでしょうか……?

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