2-17 作戦の成否は

 結局、アルバート会長とエドモンド副会長の阿吽あうんの呼吸によるみごとな連携プレーのおかげで

 学園の生徒のうち、今回の件にかかわったのは

 アルバート会長ただひとり

 ということになったの


 会長は学園だけでなく、王宮からの尋問じんもんに対しても


「自分ひとりで移動遊園地に行った」


 との主張をつらぬいたわ


 会長は出かける際にも、周りに対して外で他の人間と会うというのは言ってなくて

 この主張は比較的すんなりと受け入れられたようね

 ただ王宮からはかなりのお目玉を食らったみたい


 まあ、この国の第三王子が

 国の危機でも何でもないのに

 死ぬかもしれない危険にみずから飛び込んでいったのだから

 仕方ないと言えばそうなんだけど

 王宮から10日間の謹慎きんしんという処分をされたらしいとのうわさが私の耳にも入ってきたわ


 で、今回の作戦の総括なんだけど

 当初の目的である「会長にエドモンド副会長のことを好きになってもらう」は失敗だったか

 というと微妙なところがあるのよね


 えっ?、「どう見ても失敗だっただろ」ですって?

 たしかに「ふたりを恋愛関係にさせる」ことに失敗したのは私も認めるわ

 でも「好き」っていろいろな意味があるじゃない?

 実は「親密度」という観点から言うと

 今回の件で明らかにふたりの親密度はアップしているみたいなのよね


 ふたりは学園に戻ってからも、相変わらず互いを「エド」「アル」と呼び合っているの

 以前は少なくとも人前では「エドモンド」「会長」だったのにね


 実はこれが学園内に誤解を生んでいて


「ふたりがつきあっているんじゃないか」


 といううわさが広まっているくらい

 でもふたりをよーく知るこの私が断言します

 ふたりはつきあってません


 えっ?、「なぜそう断言できるのか」ですって?

 それはふたりの親密度がアップしたその原因が

 何を隠そう

 ほかならぬこの「私」だから!


 なんとふたりは勝手に「ジャンをまもろう同盟」なるものを結成しちゃったのよね

 ※ちなみにこの名称は私が勝手にそう呼んでいるものです


「「我らはこの命が尽きるまでジャンをまもることを誓う」」


 よりによって、ふたりそろって私の目の前でそんなことまで言い出したんだからね


 美形男子ふたりが互いに向き合って

 胸の前で互いの両手をしっかりとつか

 キラキラした瞳で互いの目を見つめあって

 目もくらまんばかりの後光を発しながらそのセリフを言うのを見るのは

 まあ、別にきらいじゃなかったわ


 ホント、絵面えづらだけ見たらBL漫画の恋愛成就じょうじゅの場面にしか見えないんだけど

 問題はふたりの恋愛ベクトルの矢印が向いてる先がお互いじゃなくて

 ふたりそろって私に、ってのが……ね


 まあ、あのとき観覧車めがけて駆け出した私を見て


「ジャンは放っておくと何をしでかすかわからない」


 なんて思われただけ、っていう可能性もないわけじゃないとは思うんだけどね


 というわけで、記念すべき「Project Q」第1回作戦の成否せいひは「ドロー」ということでいいわね?

 異論は認めません


 次はハッキリと成功してみせるんだから

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BLゲームの世界に転生したけど女の子だったので男装して舞台の学園に入学したらなぜか攻略対象認定されました 金屋かつひさ @kanaya9th

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