2-7 シミュレーション? 妄想?

 こんな「ふたり一緒に」と「ドキドキ」を、アトラクションに乗るたびに繰り返し繰り返し浴びるわけ

 理性で抵抗しようとしても無駄よ

 なんせそいつは「無意識」に対していてくるんだから


 さあて、どうなるかしらね


 エドモンド副会長の方は問題ないはず

 いまの時点でアルバート会長に恋をしてるんだから


 肝心かんじんなのはアルバート会長の方

 私が見る限り、エドモンド副会長に恋愛感情をいだいているようには見えない

 でもすごく信頼していて心を許しているのは間違いない

 そこが狙い目


 心を許した相手と一緒に同じ非日常の体験をして

 繰り返し襲うドキドキ感

 しかも相手はこっちの世界でもトップクラスの美形

 これはもう「特別な感情」が湧かない方がおかしいでしょ


 アトラクション間の移動でふたりならんで歩いている時

 アルバート会長がさりげなくエドモンド副会長の手を握るの

 突然のことで驚くエドモンド副会長

 ビクッとして体は硬直しながら思わずアルバート会長の顔を見つめるの

 それに対してアルバート会長が声を掛ける


「こういうのは嫌かな」

「いえ、そういうわけでは……」

「なら、構わないな」


 アルバート会長はそう言うと、握った手を自分の方にぐっと引き寄せるの

 その力があまりに強かったものだから

 エドモンド副会長はコマのように1回転しながらアルバート会長の胸の中へ

 それを優しく抱きとめるアルバート会長

 見つめ合うふたり

 そしてふたりの顔は自然に近づいていき……


 ってダメ! シミュレーション中止!

 もう、考えただけでこっちまで恥ずかしくなってくるじゃない

 ちょっと他のことを考えましょう


 そうね、いくつもアトラクションをはしごすると体力を消耗するわね

 アルバート会長は多分大丈夫。どちらかというと前世で言う体育会系だから


 エドモンド副会長は反対に文化会系ってイメージよね

 生徒会でも机に座って事務処理しているような感じかな

 そんなエドモンド副会長がいくつもアトラクションをはしごしたら……


 もしかしたら降りたときにふらついたりするかもしれない

 すかさず脇から支えるアルバート会長

 突然のことで驚くエドモンド副会長

 ビクッとして体は硬直しながら思わずアルバート会長の顔を見つめるの

 それに対してアルバート会長が声を掛ける


「大丈夫か?」

「ああ、すみません。ちょっと疲れたみたいで」

「そうか、無理はいかんな。あの木陰で休むとしようか」


 アルバート会長はエドモンド副会長の肩を抱くと、人の目のつきにくい木陰へとふたり一緒に消えていくの

 そして木陰に隠れてふたりは……


 ってダメ! シミュレーション中止!

 もう、なにやってんの私は


 あっ、いまだれか「妄想じゃん」と言ったわね

 あくまでこれは事前のシミュレーション

 断じて妄想なんかじゃないんだからねっ

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