1-15 正門にて①

 うわあ、どうして気づかなかった私

 バカバカバカ、私のバカ

 もう、『うるわしの君たちへ』フリーク失格ね


 あーあ、紹介の仕方を変えなきゃ良かったかな

 もし変えていなかったら、絶対そこで気づいたはず

 なんでこう、打つ手がことごとく裏目に出るのよ!


 まあいいわ。済んでしまったことは仕方ない

 これからのことを考えましょう


 要するにオリバーは、私がちい兄さまと同室なのが気に入らないのね

 でも気に入らないだけでからんでこられてもねえ

 だから言ってやったの


「でもそんなの仕方がないじゃないか。部屋割りは学園が決めるんだし」

「そうだよ。部屋割りは学園が決める。でもおかしいじゃないか」

「おかしい? どこが」

「おかしいよ。だって普通、兄弟は同室にさせないって言うじゃないか」


 あー、そこか。そこを突いてきましたか

 ルールとして明文化はされていないみたいだけど、たしかにそういう運用らしいわね


「そうだとしても僕のせいじゃない。文句があるなら学園に言えば?」

「言ったさ。そうしたらなんて言われたと思う? 『理事長の指示だ』ってさ」


 文句言ったんだ。でもまあ、そうなるよね


「じゃあそれで終わりじゃないか。理事長の指示なんだし、なおさら僕が文句言われる筋合いは……」

「ある!」


 えっ?


「だってますますおかしいじゃないか。なんで理事長がわざわざ寮の部屋割りなんかに口を出す? 『何か裏に隠された理由がある』と考えるのが当然じゃないか」


 うっ、言われてみればその通り

 もし私が逆にオリバーの立場だったら、絶対そう考えたでしょうね

 でもマズイ。このまま「この問題に理事長がかかわっている」点を追究されたら、私が女の子だとバレちゃうかも


「り、理由ね。まあ、なんかあったんじゃないの」

「とぼけるな! お前、何か知っているだろ」

「し、知るわけないじゃないか」

「うそだ! お前、賄賂わいろとか贈ったんじゃないのか」


 追究はますます激しくなる

 でもなんで? なんでオリバーはちい兄さまと同室になれなかったのがこんなに不満なの?

 入学式直前に部屋を追い出されたからだとしても、激しすぎない?

 それだけじゃなくて「何か裏に隠された理由がある」んじゃないかしら

 あっ、もしかして……


「もしかして、君、ちい兄さまのことが好きなの?」


 途端に真っ赤になって黙り込む彼

 ビンゴね。わかりやすくていいわ


 周りの連中も私たちの言い争いにざわざわし始めた

 できればここで注目を集めることは避けたい

 せっかく朝のうわさが収まってきたってところなのに

 また注目されちゃったら、私の「BLをでるツアー」が永遠に開催できなくなっちゃう

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