1-5 二人目のメインキャラ

 いま私は、そのメインキャラクターのひとりであるエドモンドに見つめられているんですけど……

 でもその目線、どう見てもにらみつけているようにしか見えないんですけど……


 これまで私、彼と実際に会ったことないよ

 アルバート会長の右腕とも言われているけど、あの渡り廊下での一件の時はいなかったし

 ゲームではもっとおだやかな表情だったと思うんですけど……

 あんなキャラじゃなかったと思うんですけど……


 もしかして、これも渡り廊下での件が関係しているの?

 私に拒絶されたので、アルバート会長が怒り狂っている、とか

 それで副会長の彼も、私のことを敵認定している、とか


 うわあ、ますますマズい

 学園中の注目の的になっているだけでもマズいのに

 寄りによって生徒会にまで目をつけられるだなんて


 下手したら、私の学園内でのあらゆる行動が、全部生徒会へ密告されたりしかねない

 アルバート会長に取り入ろうとしている連中も学園内にはいっぱいいるだろうし

 私の件はそういった連中にはおいしいネタに見えているはず


 なんてことを考えていたら、いま教室に入ってきたクラスメートから声をかけられた


「ちょっと、ジャン君」

「なに」

「いま廊下で上級生から君宛のメモを渡されたんだけれど」


 嫌な予感しかしない。しないけど、受け取らないわけにはいかない

 メモにはこうあった


「今日の昼食後、生徒会室に来るように。生徒会副会長エドモンド・ド・ヴァンダム」


 あっ! と思って窓の方を見たけど、エドモンドの姿はすでになかった


 その日、午前中の授業はずっと憂鬱ゆううつ

 昼食も半分くらいしかのどを通らなかったわ


 生徒会室、行きたくないな

 でも行かなかったら次にどうなるのか見当もつかない

 さすがにゲームではこんな展開、なかったからね


 重い足取りで生徒会室に向かう

 周りの生徒の目が朝よりもずっと気になる

 しかも私が向かっているのがどうやら生徒会室だとわかると、ギャラリーがどんどん増えていっている気がする


 そしてついに生徒会室の前に来た

 私の周りには半円状に取り囲む野次馬……じゃなくギャラリーの連中


 この後の展開は多分こうなるはず


 ドアを開ける。すると正面にアルバート会長

 その脇にはエドモンド副会長

 周りを生徒会の面々が取り囲んで

 私はただひたすら会長の“お誘い”を断ったことを責め立てられるの

 やがて耐えきれなくなった私は、会長とおつきあいすることを無理やり承諾させられて

 おつきあいの証しとして会長に私の唇を……


 あー、嫌だ嫌だ嫌だ

 BLをでたいから入学したのに、なんで私が攻略されなきゃならないの

 考えただけで気分が悪くなってきたわ


 でももう後戻りはできない

 私は意を決してドアをノックした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る