0-13 理事長の秘密
理事長の声のトーンがちょっと落ちた
声量も心なしか少し小さくなったみたい
なになに、いったい何を聞かれるの
「そなたの祖父からわしのことをどのように聞いておるかの」
なんだ、そんなことか
てっきり私自身に関する、すごく答えにくいことを聞かれるんじゃないかとヒヤヒヤしたじゃない
「
「ふむ、他には」
「いろいろ面倒を見たと言っておりました」
「さようか。何かその頃のエピソードなどは聞いてはおらぬか」
「特には。高学年になってからも、朝起きるとたびたびベッドの上に世界地図を描いていたなどということは、聞いてはおりませぬ」
言っちゃった。どうしても我慢できなかった
でも悪いのは私じゃないよ。私だって言うつもりじゃなかった
でも「何かその頃のエピソードなど」なんて言うから仕方ないじゃない
でもその瞬間の理事長の顔ったらなかったな
前世の日本で言う「鳩が豆鉄砲食らったような」って、きっとああいう表情を言うのね
理事長は顔色を赤くしたり青くしたりを何度か繰り返した後、大声で笑い出した
「ぐわっはっは! 『世界地図』か。実におもしろいことを言うの。この年まで生きてきて、そのような表現に出逢うたのは初めてじゃ」
理事長はしばらく笑いやまなかった
どうやら合格は取り消されずに済んだみたい
でもアレを「世界地図」って言うの、この世界では一般的じゃないのかな
「しっかり学びなさい。期待しておるぞ」
その後、おみやげまでたくさん持たせてくださって、私はまた馬車に乗って侯爵邸を後にした
いつの間にか雨は上がっていて、ちょうど学園の方向に見える虹が、まるで私の前途を祝福してくれているように見えた
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