0-6 ゲームの世界

 『うるわしの君たちへ』


 これは前世で私が一番大好きだったBLゲームのタイトル


 前世の私はBLものなら何でも手当たり次第に手に取った。小説、漫画、アニメやテレビドラマ、それにゲーム


 中でも一番のお気に入りが配信ゲーム、『麗しの君たちへ』


 架空のどこかの王国にある全寮制の男子校を舞台に、王族を含めさまざまな貴族のイケメンたちの間で繰り広げられる、甘くあでやかな物語

 主な攻略対象は5人

 プレーヤーはそのうちのひとりになり、学園生活を送る


 オリジナルと「2」があり、おお兄さまの名前の「クロード・ド・モンテルミエ」はオリジナルで、ちい兄さまの名前の「シモン・ド・モンテルミエ」は「2」で登場する。ゲームの設定としては、クロードが学園を卒業した後に、入れ替わるように弟のシモンが入学したということになっている


 ちなみにクロードが「2」で外れたからといって人気がなかったわけじゃない。実際、「2」でクロードがいないことがわかると、SNS上では非難の声が巻き起こったほどだ


 ところが実際に「2」が配信開始されるとほどなく、なんとクロードが隠しキャラで存在するのを見つけた人が現れた。プレーヤーキャラの選択肢には出てこないけど、ある条件をクリアするようにゲームを進めると現れて、難易度はかなり高いけど攻略可能。発見者がSNSで報告して、どうやらそれが事実だとわかった途端、非難の声が一転して絶賛の嵐に。もちろん私もその手のひら返しをしたうちのひとりなんだけど


 その後、お母さまに確認したところ、おお兄さまはまさに今月、学園を卒業されるの。卒業式はまだだけど、来月からの近衛師団入団のために、すでに師団の寮に入っているそう

 ちい兄さまは来月から学園に入学するので、いまはこのお屋敷内でその準備中ということだった


(つまり、いまはオリジナルと「2」のちょうど間ということね)


 私は胸が高鳴るのを押さえられなかった

 だってあの大好きだった『麗しの君たちへ』の世界が

 その舞台となる「聖ガスパール学園」が

 実際に手の届くところに実在しているんですもの


 画面の中で見たり聞いたりするだけじゃなく

 匂いを嗅いだり

 体温を感じたり

 それどころか触れたりすることができるんですもの


 ゲームのドキドキ感も素敵だけど、きっとそれを超えるすごい体験ができるに決まっているんですもの

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