プロローグ③

 BL、つまりはBoys' Love

 男性の、男性による、男性のための恋愛

 異性が関わらない分、純粋かつ純真


(あれがリアルなBLなの。思っていたよりずっとすごい)


 もちろん実物を見るのは初めて。記憶の中では小説や漫画、それから画面の中でしか体験したことはなかった。それがいま、自分の目の先で、現実に、3Dで展開されている


 涙が出てきた。視界がぼやける。ダメ。せっかくリアルBLを見られるっていうのに。その場の空気を感じられるっていうのに


 慌てて涙を拭った。見逃すものか。もうあのふたりの挙動をほんのわずかでも見逃すもんですか


 時間にして10秒か、せいぜい20秒くらいだったはずなのに、いつの間にかふたりは互いをじっと見つめ合っている


 そして僕が見つめるその先で、ふたりの顔の距離は次第に近くなり……


 突然背後から声がした


「そこで何をしている」


 驚いて振り向くと、そこには学園の制服を着た人間が数人


(えっ、生徒? なんでこんな時間に集団で)


 僕が考えをまとめる間もなく、彼らの中央に立つひときわりんとした生徒が言い放った


「もう一度聞く。こんな時間にそこで何をしている」


 僕は慌ててその人とさっきまでのふたりの方を交互に見た。ようやく見れたBL展開。なのに、あのふたりがこの声に驚いて逃げてしまったんじゃないか。僕の心配はただその一点だけ。だけど幸いにも、ふたりだけの世界に没入していてこっちの様子には気づいていないよう

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