プロローグ②
僕はちょうど校舎から渡り廊下への角を曲がるところだった。下校時間はとっくに過ぎているのだから早く寮に帰らないといけない。なのに僕の足はピタリと動きを止めてしまったんだ
ひとけのないはずの渡り廊下。真っ赤に染まったその中ほど。窓際にふたつの影が見えたからだ
「そ、そんなこと、急に言われても……」
戸惑いに満ちたか細い声がした
僕は思わず廊下の角に身を隠した。そして息を潜めた。何が、何が起ころうとしているの。ふたつの人影。か細い声を出した方は僕と同じくらいの背格好。多分同じ新入生なんだろう。ここから距離があってはっきりとは見えないけどかわいい顔のようだ。そしてもう一方は明らかに背が高いから多分上級生。相手の肩に右手をかけて少し前屈みで見下ろしている。新入生は顔を背けて目を合わそうとしていない
えっ、もしかしていじめ? 恐喝? いや、そんな感じじゃない。暴力とかそういう意味じゃなく別の意味で危険な香りがする。これはもしかしたら。もしかしたらもしかしたら、入学早々すごい場面に出くわしたのかも
「こういうのは初めてかい。なら戸惑うのも無理はない」
上級生の優しげな声
「でも僕は本気だ。学園で初めて君を見た時から胸が苦しいんだ。僕のこの想いをどうか受け入れてほしい」
燃えるような赤い廊下。情熱の赤の中で。ちょっとこれは間違いない。これは、アレだ。アレなんだ
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