エクスカイザービギンズ

第6話「運命の依頼①」

これは直樹がエクスカイザーになる少し前の話……。


-2021年·春-

桜が舞う桜並木の通りを自転車で疾走する直樹……。

「やっべ……ギリギリだ……」

直樹は遅刻をする寸前で事務所へ急いでいた。

「おーい!直樹君!」

「え?」

急ぐ直樹に声を掛けて来たのは三浦だった。

「ああ、三浦さん!おはようございます!すみません急いでるんで!!」


「なんだ……安全運転でなー!」


三浦と別れ直樹は事務所に到着。

「ハァ……ハァ……ギ……ギリギリ1分前……間に合った……」

直樹は事務所に入って行く。

「バカ野郎!間に合ってねぇ!!いつも5分前には来とけっつてんだろ!!」

岡本総司の激が飛ぶ。

「うおぉ!?おやっさん!?いや、仕事に間に合ってんだからいいじゃねぇかよー」

「ったく……そんなだからおめぇはいつまでも半人前だってんだ……」

そう言うと総司はネクタイを締め直しデスクの上に置いてあった車のキーを取る。

「行くぞ……今日はでかいヤマが待ってんだ……時間がねぇ」

「あっ……ああ……」


総司と直樹は車に乗り依頼人の元へ出発する。


「おやっさん、今日の依頼は?」

「まずは中村さん宅のペットのキャンディちゃんが迷子らしい……中村さん宅で詳しい話を聞くぞ」

「ってペット探しかよ……全然でかいヤマなんかじゃねぇじゃん……」

「バカ野郎!!いつも言ってんだろ……依頼人は藁にもすがる想いでうちの事務所に依頼してんだ……その依頼人にとって大問題だ。でかいヤマに決まってんだろ……」

「はぁ……ヘイヘイ……」


これが私立探偵岡本総司の口癖だった。

岡本総司のモットーは依頼人の依頼は絶対に断らないだった。

一番弟子の直樹は探偵と言う仕事に憧れ岡本に弟子入りしたがまだまだ半人前で総司には叱られてばかりだった。


その日の夕方―


総司と直樹は事務所に戻って来た。

「いや~……あの犬見つからねぇなぁ」

「おいおい、依頼人の大事な家族に犬はねぇだろ……ちゃんと名前で言え」

「ああ……キャンディ見つからねぇな」

「そうだな……まっ、明日も朝から探すだけだ」

「えぇ!?でも明日は別の依頼が入って無かったか?」

「ああ……明日は依頼人が事務所に相談に来るからな……まぁ、来るのは昼過ぎだからその前に事務所に戻ってくれば大丈夫だろ」

「……なぁ、おやっさん……」

「ん?なんだ?」

「いくつも依頼掛け持ちしてんだから……あんま無理して体壊すなよ」

「フッ……バカ……年寄り扱いするな半人前が」

「んだよ……そうやって半人前半人前って……」

「よし、直樹飲みに行くぞ」

「えぇ!?ってまたあの店か?」

「他にどこに行くよ?」


総司と直樹は飲みに出掛ける。


-居酒屋源-

居酒屋で総司が直樹に語る。

「いいか?ボウズ、男の乾いた心を潤してくれるのがこの一杯の酒だ……。仕事の後のこの一杯が嫌な事も全て洗い流し俺の心に癒しを与えてくれる……まぁ、お前には10年早いだろうがな……」

直樹は退屈そうな顔で聞いている。

「って、こんな小さな居酒屋でカッコつけてんじゃねぇよ……」

「ったく……お前はわかってねぇな……」

総司は呆れた様子で返す。


-翌日-


この日も朝からキャンディ探しは続いた。

そしてなんと総司は午前中に内にキャンディを見付けだし中村さんの家に届けた。


その後、午後から新たな依頼が舞い込んで来る為事務所で待機する。


午後になり新たな依頼人が事務所のドアを叩く。

「どうぞー」

中に入ってきたとは一人の男性老人。

「あの……本日は宜しくお願いします」

「どうぞ、お座り下さい」


直樹がお茶を出すと、男性は依頼の内容を話始めた。

この男性の名は芝原京太郎(しばはら きょうたろう)(73歳)

今回の依頼は学生時代の友人の様子がおかしく何やら良からぬ事をしようとしてるかも知れないから調べて欲しいとの事だった。

そして芝原は懐から手帳を出し一枚の写真を見せた。

その写真には白衣を来た男性2人が肩を組んで笑顔で写っていた。

「これは数年前の私と友人の黒沢です」


彼らは互いに研究職に就き人類の未来の為に研究をし共に競いあっていた。

黒沢と芝原は若い時に会社を立ち上げ今ではその会社も大きくなり一流の大企業にまでなっている。

しかし、黒沢の研究は人類を超人へと変える危険な研究へと発展し協力するのが恐ろしくなった芝原は会社を止め万が一の時の為に黒沢を止める為の研究をしていたと言う。

そして、芝原はテーブルの上にアタッシュケースを出しそれを開けた。

中に入っていた物は『エクスチェンジャー』と『Xキー』

「これは……」

「もしもの時は使って下さい……役に立つはずです」

「わかりましたお借りします……」

「そこで依頼料ですが、ここに請求書を送って下さい」

そう言って芝原は名刺を出した。

その名刺には現在の芝原の自宅の住所が記載されていた。

「わかりました……では明日より調査を開始します」

総司はこの依頼を引き受けた。

だが、この依頼が彼らの運命を大きく変える事になる……。


続く……。

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