興味が湧いた瞬間

見た目は、凄く綺麗な子だと思った。正直、俺のような平凡な見た目の人間と並ぶような子ではないと思った。ただ、見た目が綺麗なだけで…。俺は、凛に何の興味もわかなかった。でも、会ってみたいと言ったのは俺だ。そして、この場を用意してくれたおばちゃんの為にも、話さずに帰る事なんて出来なかった。


お見合いの要領で彼女に話すけれど、食べ物も飲み物も何でもいいと言われてしまって、それ以上は聞けなかった。俺は、困っていた。興味がないにしても、ここまで露骨な態度をされると正直めんどくささがかってくる。どうして、凛はここに来たのかが全く理解できなかった。


そんな時だった。


「どうせ、セックスしたいだけでしょ?」と突然言われた。


俺は、凛を驚いた顔で見つめる。あの日の恥ずかしさと悲しさがやってきて汗が噴き出してくる。俺は、凛の向ける眼差しに興味を持った。


「それをしなければ付き合うって事になりませんか?」気づくと唇は、その言葉を言っていた。「えっ?」凛は、驚いた顔で俺を見つめる。


「いや、そこに行くまでの過程を全部捨てて!すぐに、そこに行かないと凛さんとは付き合えないのでしょうか?」俺の口は、また勝手に動いた。凛の目が、俺をハッキリと見つめた。興味を持ってくれたのがわかった。

よかった。何かわからないけれど、俺は凄くホッとしていた。


「連絡先、教えてもらえますか?」


俺の言葉に、凛は頷いてくれた。連絡先を交換する。

最初は、珈琲一杯で帰ろうとしていたのに…。


「あの、皆月さん」


「龍次郎でいいですよ!」


「あっ、龍次郎君。ご飯食べていいですか?」


「あっ、はい」


「ここ、ナポリタンが美味しいって片平さんが言ってました」


「じゃあ、それ食べましょう」


凛は、店員さんにナポリタンを二つ頼んでくれた。人が人を好きになるのに、理由なんていらないんだと思った。

凛が抱えてる何かと俺の抱えるものが共鳴したんだ。

ただ、それだけの事。


もし、あの時、凛があの目を俺に向けてあの言葉を話さなかったら…。

きっと、俺達は付き合う事はなかった。

その方が、凛にとっては幸せだったのかも知れないよな…。


俺は、左手の薬指を天井にかざした。


八角形の結婚指輪がいいと凛が言うから、それにした。


指輪と紙切れ一枚の関係。


いつだって別れられてしまう関係。


それが、子供がいない夫婦だ。


俺は、指輪に触れる。


それでも、俺は別れたくない。


凛が、例え浮気をしていても、知らない男に抱かれていても…。


だって、俺。


凛のお陰で、また恋愛をしようって思えたから…。


もう一度、愛を信じてみようって思えたから…。

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