大丈夫か?

俺は、凛にずっと何も聞けなかった。


「龍」


「何?」


「昔、俺に話したやん!その蓮見の女が来た後」


「何だっけ?」


そう言って、俺はもも串を食べる。


「凛ちゃんが、蓮見としてても別れないって言ってたやん」


「これから先もないよ」


「龍の人生変えてくれたんよなー!凛ちゃん」


「うん」


俺は、ビールをゴクゴク飲んだ。


「かっこいいで!龍」


「まこだって、同じだろ?散々、まいちゃんに浮気されまくってただろ」


「ハハハ、そうやな!」


「何で、別れないんだって思ってたよ」


「それな!惚れたら負けやで!やけど、惚れてるからしゃーないよなー。俺には、まい以上のええ女おらんし」


「それは、俺も同じ」


「ハハハ、じゃあ!しゃあないやん」


そう言って、まこは笑ってる。悪いけど、俺は凛を誰かに渡す気は一ミリもない。だから、離婚なんて絶対しない。


「一周回って絶対帰ってくるもんなー」


「うん、そう信じてる」


まこは、笑いながらビールを飲んでる。


「なぁ!龍」


「何?」


「浮気されたんが、結婚一年目やったら別れてたか?」


「どうだろうな…。それでも、俺は別れなかった気がするよ」


「何かわかるなー。俺もそやわ!まいの浮気わかったん。三年半の時やったけど…。一年目でも、俺は離婚せんかったわ」


そう言いながら、まこは思い出したように柔らかい顔を浮かべて目を細めている。


「俺にも至らない所があったと思うんだよ。浮気される原因を俺は作ったんだ。凛を追い詰めたから…」


「何かあったんとか聞くつもりないで!夫婦の問題やから!せやけど、あの連絡くれた日に何か見たんやな」


俺は、まこの言葉にポロポロ泣いていた。


「泣くなや!龍!もう、それは過ぎ去ったんやろ?」


「うん、うん」


紙ナプキンで涙を拭った。もう、怖い事は過ぎ去った。だから、大丈夫なんだ。


「あー、まいから連絡きてもうたわ!もっと、龍と話したかったな!最終日も、飲まへん?」


「勿論だよ」


「昼御飯、食えそうなら連絡するわ!ごっつうまい店知ってんねん」


「行きたいな!」


「おお!ほな、帰ろか?」


「うん、帰ろう」


俺とまこは、ビールをいっきに飲み干してお会計をした。店から出て、すぐに別れる。


「ほなな」


「うん、おやすみ!気をつけて」


「ああ!龍も気ぃつけや」


そう言って手を振った。俺は、ほろ酔いの足取りでホテルに帰ってきた。


何でもいい!凛が、今生きているだけで、俺は何もいらない。スーツを脱いで、ハンガーにかける。仕事着じゃないスーツは、肩が凝る。


俺は、歯磨きをしてパジャマを着てドカッとベッドに横になった。

凛と出会った日を思い出しながら、天井を見つめる。

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